●14日はNHKホールで熊倉優指揮N響。ゲスト・コンサートマスターに白井圭。N響の客席は今も一席空け。客席に若い女性の姿が目立つのだが、これは藤田真央効果? プログラムは前半にメンデルスゾーンの「フィンガルの洞窟」、シューマンのピアノ協奏曲(藤田真央)、後半にバッハ~レーガーのコラール前奏曲「おお人よ、おまえの罪に泣け」、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」。ウイルス禍による編成上の制約もあってか、ここ最近は珍しい曲を聴く機会が多かったのだが、久々に有名曲が並んだプログラム。「フィンガルの洞窟」はかなり遅いテンポでじっくりとスタート、海蝕洞の威容に心がざわめくかのよう。シューマンは藤田真央にぴったりのレパートリー。よどみなく音楽が流れ、詩情豊か。澄んだ音色でみずみずしい音楽が紡ぎだされる。タッチが繊細なのでNHKホールの巨大な空間にニュアンスが埋もれてしまった感も否めないが、これは彼に限ったことではなく。アンコールはシマノフスキの4つの練習曲作品4の第3曲。
●「イタリア」はとりわけ弦楽セクションの底力を感じる立派な演奏で、豊かな中音域に支えられた厚みのある響きが印象的。しなやかで快活、けれんのない健やかなメンデルスゾーン。決して微温的なメンデルスゾーンに陥らず、血の通った音楽になっていた。指揮の熊倉優が1992年生まれという若さにもびっくりだが、藤田真央は1998年生まれ。そしてN響も今やかなり若い集団なので、客席含めてすべてがフレッシュ。
November 16, 2020