●「トロールの森」は杉並区の都立善福寺公園を中心に西荻窪周辺エリアで展開される国際野外アート展。昨日で日程が終了したのだが、善福寺公園の展示のみ見てきた。公園のあちこちに作品が点在していて、展示を目的にというよりは公園を目的に来た人が、通りすがりに眺めてゆくといった緩い雰囲気。
●「トロールの森」にはこれまでにも何度も足を運んでいるのだが、これまでの印象は薄め。というのも、この公園そのものがとても魅力的で、園内に作品が展示してあっても、周囲の自然がもたらす造形の精妙さと複雑さに対して、作品が弱々しく感じることが多かった。自然といっても都市の公園だから、あくまでコントロールされた自然であって、そういう意味では造園工がアーティストに完勝していたとも言える。ただ、今回は「これはいいな」と思える作品が何点かあって、もしかするとこの企画は年々パワーアップしているのかも?と思った。
●そのひとつ、「自然的距離」(中尾紫香)。つまり、ソーシャル・ディスタンスならぬナチュラル・ディスタンス。樹木の間隔というのはもともとナチュラルなディスタンス以外にありえないわけだが、木々の間に公園の間伐材を詰めて、わざわざ「密」な木の壁を作り出している。人間が離れるなら、木は接近しよう、みたいなおかしさがある。
●もうひとつ、「ウォーターワールド」(栗田昇)。善福寺池の片隅に水車と噴水が設置されている。水車はくるくる回っているし、噴水からは水が噴き出ているのだが、電力等の動力源を用いず、高いところから低いところへ向かう水の流れだけでこれを実現している。現代アートという以上に匠の技。デザインの力。
November 24, 2020