●ディエゴ・マラドーナ逝去。サッカーの世界では次々とスーパースターが誕生するが、もうこのような存在は二度と現れないだろうと思えるのはマラドーナだけ。能力でマラドーナを超える選手が出てきたとしても、神話性でマラドーナに並ぶことは難しい。現代フットボールの世界で、「神の子」と呼ばれ、信仰の対象にまでなるような選手を想像できない。
●もっとも記憶に残るプレイは、やはりワールドカップ1986メキシコ大会における対イングランド戦の「5人抜き」と「神の手」ゴール。1986年大会は、本来コロンビアが開催権を持っていたが、これを返上したため、1970年に続いてメキシコで開かれることになった。フォークランド紛争の当事者同士による因縁の対決が準々決勝で実現。2つの伝説は間を置かずして訪れた。51分のマラドーナの「神の手」は、次のゴールがなければただの誤審でしかなかっただろう。しかし55分に伝説の「5人抜き」ゴールが誕生する。もうこんなプレイが飛び出したら、ハンドの誤審などどうでもよくなる。この試合で1点返したイングランドの選手が後に名古屋に在籍するリネカー。
●マラドーナの選手時代の頂点はナポリ時代だろう。84年にバルセロナからナポリに移籍して、南部の弱小チームを史上初めてセリエA優勝に導いた。でも、当時の日本では海外サッカー情報を得る手段が乏しく、ナポリ時代のことは後から知ったことばかり。セリエAとかナポリの位置づけもわかっていなかった。92年にセビリアに移籍した頃になると、リアルタイムの情報もなくはなかった。まだインターネット以前だったがパソコン通信を通じて、セビリアの試合結果をチェックしていたのを思い出す。が、得点者にマラドーナの名前を見ることはまれ。ナポリに訪れたような奇跡は起きなかった。薬物依存症がなければぜんぜん違ったキャリアがあったはず。
●一度、メッシがスペインリーグでマラドーナそっくりの5人抜きゴールを決めたことがあった。あまりにも似ていて、本当に驚く。ただ、メッシも左利きだけど、最後のゴールは右足で蹴っている。マラドーナは最後まで左足。
December 4, 2020