●12日はサントリーホールで樫本大進&キリル・ゲルシュタイン デュオ・リサイタル。19時開演で、プログラムも予定通り。現在、緊急事態宣言が発出されているが、感染拡大予防ガイドラインによればすでにチケット発売済みの公演については20時以後の終演が許容されている。出演者はともに14日間の隔離期間を経ての全国ツアー中。
●プログラムはプロコフィエフの「5つのメロディ」Op.35bis、フランクのヴァイオリン・ソナタ、休憩をはさんで武満徹「妖精の距離」、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」。それぞれ異なる国の音楽が4曲並んだプログラムだが、前後半がともに「20世紀の抒情的な作品+イ長調の大ソナタ」という相似形をなしている。武満作品は静謐というよりはむしろ官能的で、意外に身振りの大きな音楽。作曲は1951年。最初期の作品ということになる。フランクもベートーヴェンもホールの広大な空間に対抗するかのようなドラマティックな音楽。ベルリン・フィルのコンサートマスターで見せる姿とはまったく違った、ソリストとしての一歩踏み込んだ自在の表現で、ピアノとヴァイオリンの間でひりひりとした応酬がくりひろげられる。洗練された熱さというか。ピアノに譜面台がなかったが、タブレットを平置きにしていた模様。アンコールはルドルフ・フリムルの「ベルスーズ」(子守歌)op.50。ぜんぜん知らない曲。終演後は例によって分散退場。
●夜8時以降、不要不急の外出を自粛する要請が出ているが、帰りの電車はほどほど。普段に比べればずっと人が少ないのだろうが、がらがらというほどでもない。飲食店は閉まっているのか。もともと演奏会の後に外食することは皆無なので、緊急事態宣言の実感は薄い。ただ、コンサートに限らず、どんなイベントであってもそこに無症状感染者が1名以上いるという前提は意識している。というか、感染者がひとりもいないのなら、そもそもマスクもディスタンスもブラボー禁止も不要なわけで、この前提は昨年からずっと変わっていない。忘れがちだが、自分自身がその感染者である可能性も排除されない。
January 13, 2021