●19日はサントリーホールでヴァイグレ指揮読響。セバスティアン・ヴァイグレはたぶん11月下旬に来日して14日間の隔離期間をクリアしたと思うのだが、そのままずっと日本に滞在し続けて読響と共演を重ねている。しかも2月の二期会「タンホイザー」で指揮者がヴァイグレに変更になったので、さらに滞在期間が延びることに(こちらも読響)。頭が下がる。
●プログラムはリヒャルト・シュトラウスの交響詩「マクベス」、ハルトマン「葬送協奏曲」(成田達輝)、ヒンデミットの交響曲「画家マティス」。ドイツ音楽プロではあるのだが、3曲のキャラクターはそれぞれで、ロマン、モダン、新古典の3つの味がひとつになった詰め合わせのような趣向。若きシュトラウスの「マクベス」はゴージャス。昨年はほとんど小編成の曲ばかり聴いていたので、久々に壮麗で豪快なサウンドを堪能した感。エンタテインメント性に富んだいい曲だと思うんだけど、もうひとつ人気が出ないのは音楽と物語のつながりが見えにくいからか。「マクベス」の物語では王位を巡る血なまぐさい権力闘争が描かれるが、ナチス政権という現実の権力に翻弄されたのがカール・アマデウス・ハルトマン。独奏ヴァイオリンと弦楽合奏のための「葬送協奏曲」では、当初予定のツェートマイアーに代わって成田達輝が出演。この曲で変更がなかったのも驚きだが、実は成田はカヴァコスの推薦で2年前から曲のスコアを手に入れて読んでいたのだとか。鮮烈な技術に加え、作品に憑依するかのような入神のソロ。これ以上は望めない。演奏後、とても長い沈黙。後半の「画家マティス」は端正、荘厳。運動性と硬質のリリシズムがもたらす快感。ヴァイグレと読響との間に以前よりも緊密さを感じる。ヴァイグレの音色が定着してきたというか。渋めのプログラムにもかかわらず、鳴りやまない拍手に応えて最後にヴァイグレのソロ・カーテンコールあり。
●終演後は分散退場。客席は収容率50%以下の制限で販売。帰り道、平時よりずっと人は少ないが、地下鉄は余裕で座れるというわけでもない。1月8日から緊急事態宣言が発出されているが、効果が数字で見えるまでのタイムラグを2週間と考えると、答え合わせはもう数日後。
January 20, 2021