●新刊ではないが、シオドア・スタージョン著の短篇集「輝く断片」(河出文庫)を読んでいたら、意外にも「音楽小説」に遭遇した。ひとつはなんと、楽器のオフィクレイドが出てくる短篇「ニュースの時間です」。普通の読者はこの楽器の名前も知らないのでは。びっくりしたので、ONTOMOの連載「耳たぶで冷やせ」で取り上げることに→「魅惑のオフィクレイド——風変わりな楽器が登場するシオドア・スタージョンの小説」。
●実はこの短篇集にはもうひとつ、「マエストロを殺せ」という音楽小説の傑作がある。バンドのメンバーが憎しみのあまりにリーダーを殺してしまう。ところが、リーダーを欠いてもバンドからは変わらずそのバンドの音楽が出てくる。なぜなのか、いったいバンドの音楽のエッセンスはどこにあるのか……という話を、スピード感あふれるクールな文体で描いている。室内楽とかオーケストラにも通じる話かも。ちなみに同じ短篇の旧訳の邦題は「死ね、名演奏家、死ね」。翻訳時点で、「マエストロ」という言葉が一般的ではないと判断されたのかもしれない。「名演奏家」では硬すぎると思うが。
●緊急事態宣言発出の1月8日から、タイムラグ相当の2週間以上が過ぎて、ようやく「答え合わせ」をできるようになった。東京都の新規陽性者数を見ると、はっきりと7日間移動平均に効果が表れている。日本全体で見ても同様の傾向で、移動平均のピークが1月11日にあるのも同じ。でも緊急事態宣言を解除したらまた増えだして、すぐに3度目の緊急事態宣言なんていうことになるのも鬱。解除のタイミングに「正解」はあるのだろうか。