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February 1, 2021

原田慶太楼指揮読響のチャイコフスキー他

●30日はめぐろパーシモンホールで原田慶太楼指揮読響。プログラムはロッシーニの「セビリアの理髪師」序曲、グリーグのピアノ協奏曲(小井土文哉)、チャイコフスキーの交響曲第5番。弦楽器は対向配置(コントラバスは上手側)。超有名曲が「序曲+協奏曲+交響曲」の順で並ぶありがちな名曲コンサートのような装いに反して、公演内容はきわめてエキサイティング。指揮者のアイディアとパッション、それを形にするオーケストラの献身性がぴたりとかみ合った。最初のロッシーニからして細部まで意匠が凝らされていて、ひとつひとつのフレーズが生気溌溂としている。グリーグのピアノ協奏曲では、2018年日本音楽コンクール第1位、2019年ヘイスティングス国際ピアノ協奏曲コンクール第1位の小井土文哉が好演。95年生まれの若さ。抒情的な表現が聴きもの。アンコールはグリーグの抒情小曲集より「アリエッタ」。ふっと余白を残して終わる様がなんとも味わい深い。
●圧巻は後半のチャイコフスキー。この曲はとことんエモーショナルにするかアンチロマンに傾けるかの両極がおもしろいと思っているのだが、原田慶太楼の指揮は前者。冒頭、遅いテンポによる悠然たる開始で、どうなることかと思ったが、スリリングで白熱したチャイコフスキーに。歌わせるところでたっぷりと歌わせるのも吉。設計は緻密、表現は大胆。まれに見るスケールの大きなチャイコフスキーを堪能できた。これだけの熱演、終われば大ブラボーが飛び出すのが普通だが、もちろん、時節柄そうはいかない。客席が静かで申しわけないと思ったくらい。
前のエントリーで、チャイコフスキーが交響曲第5番に後からシンバルを付け加えようとしていた話に触れたが、この作品について作曲者の自信はぶれまくっている。自分で指揮をしてあまりうまくいかなったことも原因のひとつなのだろう。他人の指揮で好評を得て、ようやく作品価値への疑念を払拭している。なんとなくだけど、直感的にはわからなくもない。作った本人はあまりに作為的であざといと思ってしまうけど、他人から見るとひたすら力強くて立派、みたいな二面性はままあることかも。