●2日は新国立劇場で2021/2022シーズンラインアップ説明会。対面での記者会見は本当に久しぶりで、たぶんワタシは一年以上なかったと思う。なぜオンラインではないのか、少し悩んだ末に出席することに。例年であればバレエや演劇も合同で説明会をして、その後で分野ごとの懇談会に移るところを、今回はオペラのみで会見を行い、懇談会も省略。大野和士オペラ芸術監督からラインナップがあって、その後、質疑応答という流れ。
●で、注目のラインナップだが、新制作はロッシーニ「チェネレントラ」、ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」、グルック「オルフェオとエウリディーチェ」、ドビュッシー「ペレアスとメリザンド」の4演目。大野監督はグルックのオペラ改革を軸に4つの作品の関連性を説明してくれた。シーズン開幕を飾る「チェネレントラ」は大野さんが「イタリア・オペラ最後の巨匠」と語るマウリツィオ・ベニーニが指揮。演出は粟國淳。アンジェリーナ役は注目の脇園彩。「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は本来なら昨年6月に上演が予定されていたものだが、今シーズンに仕切り直し。「奇跡的に招聘歌手全員がそろうことになった。神様の後押しを感じる」(大野)。イェンス=ダニエル・ヘルツォーク演出、大野和士指揮。「オルフェオとエウリディーチェ」では指揮に大活躍中の鈴木優人が抜擢される。演出は勅使川原三郎ということでダンスの要素にも期待。「ペレアスとメリザンド」はケイティ・ミッチェル演出で、2016年エクサンプロヴァンス音楽祭で初演されたプロダクション。題名役はベルナール・リヒターとカレン・ヴルシュ。大野和士指揮。
●レパートリー公演は「蝶々夫人」「さまよえるオランダ人」「愛の妙薬」「椿姫」「ばらの騎士」「魔笛」。目を引いた名前を挙げると、「蝶々夫人」の指揮が下野竜也、「さまよえるオランダ人」の指揮がジェームズ・コンロン、「愛の妙薬」のアディーナ役に「アルマゲドンの夢」でヒロイン役を歌っていたジェシカ・アゾーディが再登場、「ばらの騎士」の指揮がウィーン生まれで日本でもおなじみのサッシャ・ゲッツェル。大野体制は新制作で攻める分、レパートリー公演で名作を並べて、オフェンスとディフェンスのバランスをとっている感。
●こうしてランナップを眺めると、やはりワクワクする気分になる。一瞬、現在のウイルス禍を忘れてしまうというか。開幕の「チェネレントラ」が今年10月、おしまいの「ペレアスとメリザンド」が来年7月。さて、この間にパンデミックは終息しているのだろうか。ワクチン接種率が十分に高まっていれば新しい段階に進むとは思うが、はたしてそれがどんな形になるのかはよくわからない。ある意味、オペラの世界で描かれる虚構よりも現実がぶっ飛んでいるため、かつて非日常をもたらしていた劇場が、今や懐かしき日常が回帰する場所に変貌したとも感じている。
March 3, 2021