●27日は東京・春・音楽祭の子どものためのワーグナー「パルジファル」(バイロイト音楽祭提携公演)をライブ・ストリーミングで。会場は三井住友銀行東館ライジング・スクエア1階アース・ガーデン。前から気になっていた「子どものためのワーグナー」シリーズ、配信ながらようやく観ることができた。キッズ向けワーグナーというだけでも大胆なアイディアだが、なかでも「パルジファル」はもっともチャレンジングな題材だろう。超コンパクト編成で、長大な「パルジファル」をぎゅっと1時間にまとめて。石坂宏指揮東京春祭オーケストラ、大沼徹(アムフォルタス)、河野鉄平(ティトゥレル)、片寄純也(パルジファル)、斉木健詞(グルネマンツ)、友清崇(クリングゾル)、田崎尚美(クンドリ)他。冒頭にカタリーナ・ワーグナーからのビデオ・メッセージあり。
●まず、子ども向けとはいえ、歌唱はドイツ語、台詞は日本語というハイブリッド仕様。どんなストーリーになっていたか、あえて本来の「パルジファル」は忘れて、見たままをざっくり書く。まず汚いオッサンが出てきて、次に王様が槍で刺されて、オッサンが薬を作るんだけど王様の傷が治らない。そこに腕っぷしの強そうな若者があらわれて、魔法の石グラールの説明があって、開始20分もしないうちに時間が空間になって、空間が時間になる。おお、本家もこれくらい話が早ければいいのにねっ!(ウソ)。若者はおねえさんたちにお菓子と風船で誘惑されるんだけど、誘惑を断ち切って、槍を王様の傷にあてると、たちまち傷が治って王様は元気になる。で、若者が新しい王様になって、みんなハッピー。すごい! 本当に60分で終わった。
●歌手陣は芸達者で、ちゃんと日本語台詞で子供の興味を引き付けることができていたんじゃないだろうか。一方、ドイツ語歌唱は子供もわからないし、普通の大人もわからない。むしろ大人はワーグナーの音楽を聴けて大満足、みたいな感じかも。そもそも「パルジファル」は大人が見てもよくわからない。仮に子供の視点を代弁するとしたら、「どっちがいい人でどっちが悪い人?」「最後はどうしてこの人が王様になるの?」あたりだと思う。が、その問いには大人も容易に答えられない。そういう意味では「子どものためのワーグナー」として、あるべき姿だったのかも。
●槍が出てくるじゃないすか。これって「シン・エヴァンゲリオン劇場版」公開に合わせて「パルジファル」になったのかなあ?(ちがいます)。
●公演は全5公演で、残りは3/31、4/3、4/4の3公演。
March 29, 2021