●21日は東京国立近代美術館で「あやしい絵」展(~5/16)。ウイルス禍のため海外勢に頼れない事情はお隣の美術の分野でも似たようなものらしく、こういった企画展でも国内所蔵作品ばかりが集められている様子。それでもこうして趣向を凝らした企画展が成立しているのだからすごい。幕末から昭和初期の作品を中心に、一部西洋美術も含みつつ「あやしい」作品がずらりと並ぶ。妖しい、あるいは怪しい、もしかすると、ぁゃιぃ。
●特に気になった作品を一点挙げるとすると、上掲の橘小夢「水魔」(1932/個人蔵)。水魔の類は音楽ファンにもわりとおなじみで、ドビュッシーの(あるいはシェーンベルク、シベリウスの)「ペレアスとメリザンド」や、ドヴォルザークの「ルサルカ」などのイメージがあると思うが、これはなんなんだ。美しい女性が水魔なのか、それとも背中にへばりついている小さいオッサン(河童?)が水魔なのか。水へ潜っていくのか、それとも浮き上がってきているのか。思わず見入ってしまうあやしさ。
●商業デザインから生まれた作品もかなり目立っていて、いいなと思ったのは杉浦非水「三越呉服店 春の新柄陳列会ポスター」(1914/東京国立近代美術館所蔵)。なんだか今っぽい。花や植物をモチーフにした装飾的なディテールが過剰なほどつめこまれている一方、人物の表情は妙にこざっぱりしている。瞳がいい。なにか企んでいそうな目。