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April 30, 2021

「スイート・スイート・クラシック 洋菓子でめぐる音楽史」(三浦裕子著/アルテスパブリッシング)

●美しくておいしそうな写真を眺めてよだれを垂らしつつ、名曲に耳を傾けながら読むエッセイ集。「スイート・スイート・クラシック 洋菓子でめぐる音楽史」(三浦裕子著/アルテスパブリッシング)。全17章で、それぞれの章でお菓子と作曲家の組合せがとりあげられている。たとえば、「テレマンとバウムクーヘン」とか「エルガーとヴィクトリア・サンドウィッチ・ケーキ」「ラヴェルとガトー・バスク」といったように。お菓子と音楽の関わり合いというと、漠然とウィーン古典派時代あたりに力点が置かれるのかなと想像したけど、そうでもなくて、話題はとても幅広い時代と地域にまたがっている。必ずしもそれぞれのお菓子と音楽史が密接にリンクしているわけではないのだが、食が喚起する時代性はどこか深いところで音楽ともつながるはず、と実感。レシピあり。
●たとえば第1章が「中世の香り『教皇マルチェルスのミサ』とカスタニャッチョ」なんすよ。このおいしそうな本が、まさかいきなりパレストリーナから始まるとは。そしてカスタニャッチョというお菓子をワタシは知らない。読んでみるととても素朴な焼き菓子で、もしかして作れるかなと一瞬思うのだがレシピを読むと、やっぱり作らない。というのも、このお菓子は栗の粉を焼いて作るんすよ。16世紀には栗の粉はありふれたものだったかもしれないが、21世紀日本では近所のスーパーに置いてなさそう。でも、読むとわかるんだけど、カスタニャッチョには砂糖を使わない。なぜなら、当時のヨーロッパで砂糖はまだ薬ないし保存料であり、お菓子のために気軽に使われるものではなかったから。なので、栗の粉そのものの甘味を味わう、と。なるほど、パレストリーナはそんな時代の音楽なのね……と感じながら、「教皇マルチェルスのミサ」を聴いている。
●この本に即したプレイリストがあったらいいんじゃないかな。Spotifyあたりに。以下は「教皇マルチェルスのミサ」。