●やれやれ、いくらパスを回しても、人はどこにも行けない。完璧なポゼッションなどといったものは存在しない。完璧な戦術が存在しないようにね(←村上春樹風に)。てなわけで、柏の知将ネルシーニョにすっかりやられてしまったのが週末のマリノスだ。久々に相手の戦術にきれいに嵌められた感がある。ポステコグルー監督率いるマリノスはこの日もハイライン、ハイプレスのサッカーを展開したが、ネルシーニョはきめ細かな守備ブロックを敷いて攻撃を受け止め、カウンターの局面でハイラインの背後を突くという戦いを貫いてきた。特に前半などほとんどマリノスが攻めていたようでいて、実はこちらの枠内シュートはゼロ、効果的なチャンスをいくつも作り出したのは柏のほうだ。
●マリノスはオナイウ、前田、エルベルの3トップとトップ下にマルコス・ジュニオール、さらにボランチにいつもの扇原ではなく天野を配して喜田とコンビを組ませる超攻撃的布陣。天野は後ろから組み立てるというよりは前線にまで出てきた。だが、シュートが打てない。後半37分、柏のクロスボールにファーサイドでイッペイ・シノヅカ(元マリノス)が合わせて、恩返し弾を決める。完全に負けパターンと思いきや、後半41分、マリノスは中央に進出した偽サイドバック、松原が豪快な右足キックでゴールに叩き込んで同点。これは練習でもそうそう決まらないシュートだろう。1対1。連敗は避けられたが、気分は負け試合に近い。
●FIFAがオフサイドのルールを変更するという話が出てきた。現状では攻撃側の選手がオフサイドラインより少しでも前に体が出ていればオフサイドだが、改正案では体の一部がオフサイドラインに残っていればオンサイドとみなされるのだとか。FIFA理事でもある田嶋日本サッカー協会会長によれば「議論は始まっているというよりは、終わっている」。これはすごく大きな変更になりそう。ディフェンスラインの裏を破りやすくなり、ゴールが増える……かもしれない。でもどうなのかな。逆にハイラインは損だということになって、ディフェンスラインをぐっと低くするチームが増えるかも。あと、オフサイドトラップは消える。そして、VARがないリーグでは揉める判定が増えそう。
May 25, 2021