●一年遅れのEURO2020、準決勝のもう一試合はイングランド対デンマーク。会場はロンドンのウェンブリー。スタジアムは大賑わいだ。決勝も同じくウェンブリーなので、どう考えてもこの試合はイングランドが勝って、決勝に進んだほうが大会が盛り上がる。イングランドが決勝に勝ち進んでほしい理由がもうひとつある。デンマークはグループリーグで2連敗してから1勝してトーナメントに勝ち進んだ。グループリーグで負け越しているチームが先に進めるというレギュレーションが大いに疑問。2敗もしてるのに決勝に進んでいいの? かつてデンマークは下馬評をひっくり返してこの大会で優勝したことがあるわけだが(自分の記憶にあるもっとも古いEUROがその大会)、ここでそんな番狂わせを見たくない。
●が、試合が始まってみると、意外にも拮抗したゲームに。イングランドがどこか硬いのに対し、デンマークはのびのびとプレイ。前半30分、デムスゴーに惜しいチャンスがあった後、そのデムスゴーが鮮烈なフリーキックを披露して先制ゴール。実はこれがイングランドの大会初失点(というのもすごい話だが)。しかし、39分、イングランドはラインの裏を突いて右サイドからクロスを入れて、中央のスターリングが同点ゴールを決めた……いや、スローで見るとデンマークの選手によるオウンゴールだ。これで1対1。
●後半はややデンマークが押し気味の展開で始まったが、時計の針が進むごとにどんどんとデンマークが消耗し、終盤はイングランドが一方的に攻める展開に。かろうじてデンマークは耐えたが、延長戦に入っても、イングランドの怒涛の攻撃が続く。デンマークは腰に手を当てている選手がいるのに、スターリングはすさまじいスピードでディフェンスを切り裂く。あとは決めるだけ、でもなかなか決まらない。ようやく102分にスターリングが倒されて、イングランドにPK。ケインのキックを一度はシュマイケルが弾いたが、こぼれ球をそのままケインが押し込んで、これが決勝点。ところが、スターリングが倒された場面をスローで見ると、ファウルには見えない。主審がPKを示した後、VARによるポテンシャルPKチェックが入ったが、この段階でVARも主審に同意したらしく、主審がモニターをチェックすることはなかった。まあ、映像を見てもPKだというのなら、PKなのか……? でも、PKには見えなかった。後でニュース記事を読んだら、ヴェンゲルもPKではないと主張していた。VAR時代にも「疑惑のPK」はなくならないことを学んだ。
●イングランドの逆転ゴールが決まった瞬間、場内は大騒ぎ。シャツを脱いで大声で叫ぶ大男たち。マスクどころか裸上等だ。これはどうなるの? ともあれ、以前に当欄で期待した通り、決勝戦はイングランド対イタリアになった。大会としては最良の結果だろう。どちらが勝ってもおかしくないが、賭けるならイタリアかな。
July 9, 2021