●22日はミューザ川崎へ。フェスタサマーミューザKAWASAKI 2021の開幕公演でジョナサン・ノット指揮東京交響楽団。まずは三澤慶「音楽のまちのファンファーレ」で華々しく音楽祭の開幕を告げる。ファンファーレだし、指揮者なしかと思っていたら、ちゃんとノットが登場して熱く盛り上げてくれた。いきなり指揮棒を後方にすっ飛ばしてしまうハプニング付き。東京オリンピック開幕を記念して新競技「指揮棒飛ばし」、じゃなくて。演奏が終わって指揮者が客席を向いたら、額に指揮棒を突き刺しながら拍手をしているお客さんがいるというギャグを空想したが、現実の指揮棒は客席まで飛んでいない。
●プログラムが最強。前半にラヴェル(マリウス・コンスタン編)の「夜のガスパール」(管弦楽版)、ヴァレーズ「アルカナ」、後半にラヴェルのピアノ協奏曲ト長調(萩原麻未)、ガーシュウィン「パリのアメリカ人」。曲目を見ただけで「やったー!」と快哉を叫びたくなる大盛サービス感。フランスとアメリカがテーマになっていて、特に後半はジャズを媒介にしたラヴェルとガーシュウィンの交感といった趣。
●で、マリウス・コンスタン編の「夜のガスパール」、生で聴いたのはおそらく初めて。とても華麗。ただ、ピアノの名技性に代わって色彩感が前面に打ち出されているのだが、その色合いは原曲のイメージからはかなり遠い。ヴァレーズの「アルカナ」は荘厳かつ凶暴。巨大編成の管弦楽が咆哮する。そして、やっぱりストラヴィンスキーからの影響の強さを感じる。辛口。「アルカナ」になくて「春の祭典」にあるのは民謡成分か。ラヴェルのピアノ協奏曲では、2か月前にお子さんが生まれたばかりの萩原麻未が独奏。祝。得意のラヴェルで爽快。オーケストラのソロも聴きもの。最後の「パリのアメリカ人」は、事前に発表がなかったが初稿を使用したのだとか。この流れで聴くと、ガーシュウィンの偉才は際立っている。それぞれ20世紀前半のほぼ同時代を切り取った音楽が並んでいるのだが、別方向からの斬新さ。シンフォニック・ジャズというよりは、先進的な20世紀管弦楽作品としてリスペクトしたガーシュウィン。最後はノットのソロ・カーテンコールあり。「パリのアメリカ人」でソロ・カーテンコールが起きるとは。ノットはめちゃくちゃ嬉しそう。
July 26, 2021