●11日昼、東京芸術劇場のシアターイーストへ。サラダ音楽祭の公演、子どものためのオペラ「ゴールド! ~ 少年ヤーコプとふしぎな魚のものがたり」ゲネプロを拝見(12日と13日の本番はすでに完売)。作曲はレオナルド・エヴァース、演出と台本日本語翻訳は菅尾友、出演はソプラノの柳原由香と打楽器の池上英樹。2012年にオランダで初演され、すでに欧州で何度も上演されており、今回が日本初演。たったふたりの出演者によるキッズ向けオペラなのだが、これがとてもよくできていた。
●題材となっているのはグリム童話の「漁師とおかみさん」(ほぼ同じ物語にロシア民話「金のさかな」がある)だが、主人公が少年に設定されている。少年が魚を捕まえるが、魚は逃がしてくれたらなんでも望みを叶えてあげると言う。そこで少年は魚を海に戻し、靴が欲しいと願う。だが靴を手に入れただけでは満足できず、願い事はどんどんとエスカレートしてゆく。欲望と幸福という普遍的なテーマを扱っており、子供が年齢に応じて自分なりの理解ができるテーマなのが吉。さらに音楽的にも大人が聴いて楽しめるのがいい。オペラと銘打つ以上はやはり音楽が主役。柳原由香は一人多役を歌いわけ、発音も明瞭で、演技力も抜群。池上英樹はマリンバをはじめ多数の打楽器を身体の一部のように自在に操り、ときには鍵盤ハーモニカを奏したり、役のひとりとなって演技や台詞まで披露するという八面六臂の活躍ぶり。
●演出と日本語台本も随所にアイディアが盛り込まれていて、子供たちを飽きさせない工夫が凝らされていた。波のシーンでは客席の子供たちに足踏みをさせたり膝を叩かせたりして参加を促す。子供向けとしては少々長いので(約1時間)、こういった参加要素は必須。子供はどんな斬新な音楽に対しても耳も心も開いてくれるが、長さにだけは耐えられないので。
August 12, 2021