●IIJのハイレゾストリーミングサービスPrimeSeatが、ベルリン・フィルの定期演奏会をハイレゾ音源で無料ライブ配信する(日本国内のみ)。シーズンで5公演が予定されており、先日のペトレンコ指揮による開幕演奏会も配信された。で、ライブ配信だけではなく、聴き逃し配信もあるので、さっそく聴いてみた(9月6日まで)。時差がきついのでオンデマンドはありがたい。
●音源フォーマットは4種類から選べるようになっている。DSD11.2MHz、5.6MHz、2.8MHz、PCM(96kHz/24bit)。ウチのUSB-DACはけっこう古くから使っている機種なので、あいにくDSDネイティブ再生には対応しておらず、どれを選んでもPCMになる。それでも96kHz/24bitなので、CDの44.1kHz/16bitより情報量はずっと多い。こういったライブ音源(パッケージメディアの編集された音とは別物)をDSD11.2MHzで聴く意義というのは、自分にとって未知の世界なのだが、それを求めている人がいるということなんだろう。
●音声だけなので、もしDCHで観ればまた違った印象を受けるとは思うが、最初のウェーバー「オベロン」序曲の序奏からゾクゾクした。深くまろやかなホルンの音色、精妙でニュアンスの豊かな弦楽器。「オベロン」序曲ってこんなに幻想的な曲だったかな、と戸惑うくらい。ウェーバーつながりで2曲目はヒンデミットの「ウェーバーの主題による交響的変容」、最後がシューベルトの「グレート」。シューベルトは非常にスケールの大きな演奏でエモーショナル。テンポの細かなコントロールからぐいぐいとドラマを抉り出す。起伏に富んでいて長さを感じさせない一方で、永遠に終わらないような陶酔感は薄めか。後期ロマン派に一歩踏み出しているような「グレート」。
●DSDとPCM、両方を選べるわけだが、両者の原理の違いはなかなか難しい。ほとんどの人にとって、図式化しやすいPCMのほうがわかりやすいはず。サンプリング周波数と量子化ビット数が上がれば上がるほど、波が滑らかになって原音に近くなるという理屈が腑に落ちる。一方、DSDのほうは仕組みの説明が厄介だし、なにより量子化ビット数が1bitというのが不思議な感じ。どうして1bitで音を表現できるのか、と。DSDの原理はすでにSACDで使われているので、実はかなり昔からあるわけで、SACDが登場した頃にもオーディオ系の媒体でPCMとDSDの違いが話題になっていたような記憶がある。両者の違いを解説したページはたくさんあると思うが、少し意外なところで「イヤホン・ヘッドホン専門店eイヤホン」のこちらの記事が親切だと思った。
●ほとんど自分メモ。PCMは「96kHz/24bit」みたいにサンプリング周波数と量子化ビット数を併記するのが普通だけど、DSDの場合は1bitであることが自明なので「11.2MHz」としか書かれない。PCMと同様に書けばこれは「11.2MHz/1bit」のこと。えっ、そんなの常識だって? あと、サンプリング周波数は96kHz(96,000Hz)と11.2MHz(11,289,600Hz)ではざっくり100倍違う。
September 1, 2021