●16日はサントリーホールで鈴木秀美指揮N響。本来ならトン・コープマンの指揮が予定されていたのだが、やはり来日が叶わず、代役に鈴木秀美。結果的にこの代役は大成功だったのでは。鈴木雅明、鈴木優人に続いて鈴木ファミリー続々登場のN響。曲は大バッハの(管弦楽)組曲第3番、C.P.E.バッハのシンフォニア変ロ長調Wq182-2と同ニ長調Wq183-1、ハイドンの交響曲第98番。コンサートマスターに白井圭。一曲目のバッハからN響がNHKバロックアンサンブルに大変身。ピュアで澄んだ弦楽器の響き、明確なアクセントで祝祭性を際立たせるトランペット、舞踊性を感じさせるリズム。この後にエマヌエル・バッハのシンフォニア2曲を聴くと、これはキラッキラの未来の音楽だと感じる。踊りの要素は雲散霧消して、次に何が飛び出すかまったく予想不能の驚きの音楽。アグレッシブで切れ味鋭い。ナチュラルホルン使用。N響のフレキシビリティに感嘆。
●この日のプログラムは歴史をたどる旅で、エマヌエル・バッハの冒険が架け橋となって、ハイドンという成熟に到着するストーリーを体感できる。野心家の若者からオヤジギャグを連発する自信満々のオッサンに変貌するくらいの跳躍度。交響曲第98番は壮麗でエネルギッシュ。この曲の第2楽章を聴くと、ゴッド・セイブ・ザ・クイーン(そして試合前に一列に並ぶイングランド代表)を連想せずにはいられない。終楽章、最後はチェンバロ・ソロまで飛び出す終盤の執拗なサービス精神に、ノリノリの巨匠の姿を感じる。
●今月から新シーズンを迎え、N響の定期公演が再開。これまでも演奏会は開かれていたが、20/21シーズンは定期公演という形では中止になっていた。客席の雰囲気は半ばもとに戻りつつある。最初の楽員入場時の拍手はあった。
September 17, 2021