●21日は東京オペラシティで「B→C バッハからコンテンポラリーへ」。今回はヴィオラの東条慧。近年、次々と優秀なヴィオラ奏者が登場して、ソロや室内楽で活躍して、楽器そのもののイメージを変貌させている感がある。東条慧は2021年よりデンマーク王立管弦楽団の第一首席ヴィオラ奏者として試用期間中。共演者に牧野葵美(ヴィオラ)、草冬香(ピアノ)。
●プログラムがおもしろい。前半はバッハの無伴奏チェロ組曲第5番とリゲティの無伴奏ヴィオラ・ソナタ。ただし、バッハとリゲティの各曲をそれぞれ交互に演奏するという趣向。これがぴたりとはまって楽しい。辛い物は辛くない物と交互に食べるとさらにおいしいという「柿の種理論」の音楽的実践……と言いたいところだが、バッハとリゲティではどっちが辛いのかよくわからないか。後半はデュオ。藤倉大の「ドルフィン」とジョージ・ベンジャミンの「ヴィオラ・ヴィオラ」という2曲のヴィオラ・デュオを聴けるお得感。その両曲の間にこの日では異質なテイストのプロコフィエフ~ボリソフスキー編によるピアノ伴奏の「ロメオとジュリエット」からの6曲がはさまれる。藤倉大「ドルフィン」はヴィオラ同士がヴィオラ言語で睦まじく対話しているかのような親密さ。そういえばヴィオラはイルカっぽいかもしれない(じゃあヴァイオリンは?)。一方、ベンジャミン「ヴィオラ・ヴィオラ」は、部品が絡み合って稼働する一台のマシーンのようでもあり、ヴィオラvsヴィオラの熱い一騎打ちのようでもあり。2曲のヴィオラ・デュオの対照性が際立っていた。
●時節柄かアンコールやスピーチもなく、21時少し前に終演。充足。
September 22, 2021