●少し前にフォークナーの「響きと怒り」、そして映画「バーニング 劇場版」とフォークナー「響きと怒り」について書いた。で、イ・チャンドン監督の映画「バーニング 劇場版」の原作は村上春樹の短篇「納屋を焼く」なんだけど、もうひとつの参照元かもしれないフォークナーの短編「納屋は燃える」も読んでみた(新潮文庫「フォークナー短篇集」所収)。
●こちらも他のフォークナー作品と同様にアメリカ南部が舞台で、放火癖のある暴力的な父親と、その息子の物語が描かれる。「響きと怒り」は立派な屋敷に住む白人とそこで仕える黒人たちの物語だったが、「納屋は燃える」の父親は白人労働者で、仕事を求めて家から家へと一家で渡り歩いている。住み込みで農作業を手伝うのだが、雇われ先でケチな嫌がらせみたいなことをした挙句、納屋に火をつけてはヨソの土地に去っていく。息子はそれをいけないことだと知っているのだが、子供には父親という絶対権力に背く術がない。ざっくり言えば、父親という圧政からの独立がテーマ。映画「バーニング 劇場版」と直接的な結びつきはないにせよ、暴力で裁判沙汰になっている主人公の父親像などは、このフォークナーの世界と通じる部分があるのかも。
October 6, 2021