●6月発売の雑誌を今頃になって買う。フットボール批評issue32 特集 禁断の「脱J2魔境マニュアル」。J2がおもしろいというのは自分にとってあまりに当然のことなのだが、そのおもしろさの源泉を言語化しているのがこの特集記事。J2クラブを応援している人はもちろんのこと、あらゆるサッカーファンにとって興味深い内容になっていると思う。というのもJ2では多くのクラブが非常に戦術的なサッカーを展開しており、哲学の違いがはっきりと現れているから。現代サッカー界の二大潮流としてポジショナルプレーとストーミングがよく挙げられるが、それらがJ2にも浸透している様子が伝わってくる。
●巻頭のインタビューは、ポジショナルプレーの勝利者、アルビレックス新潟のアルベルト監督。長くカウンターサッカーを主体とした新潟に、まったく異なるチームスタイルを定着させ、チームを躍進に導いた。この取材時と比べると今の新潟は順位を落としているかもしれないが(現在5位:J2順位表)、それでも新潟サポは以前よりがぜん試合観戦が楽しくなっているはず。マリノスにポステコグルー前監督がやってきたときと少し似ている。
●が、それ以上に目をひくのはブラウブリッツ秋田。「秋田から吹く熱風 ノーザンストーミングフットボールの正体」と題した記事で、秋田の吉田謙監督に取材している。秋田はJ3でボール支配率最下位、パス成功率最下位を記録しながら圧倒的な強さで優勝し、J2に昇格した。そして、J2でも同じような戦い方でリーグ中位に留まる大健闘を見せている。ワタシも大宮対秋田戦をスタジアムで観戦した際、秋田の選手たちのフィジカルの強さ、ムキムキの筋肉には目を見張った。「ノーザンストーミングフットボール」とはうまいことを言うなと思ったが、激しいプレスでボールを狩り、奪ったらゴールに一直線に向かう。ポゼッションなど一切気にしていない。しかも吉田監督の言葉づかいがまったく独特で、気取った戦術用語などまるで使わず、むしろ部活サッカー的な香りが漂っている。「球際」ではなく「魂際」、「プレスをかけろ」ではなく「噛みつけ」、チームのモットーは「寄せる距離は仲間を裏切らない」。「礼儀正しさは最高の攻撃力」という吉田語録もサッカーの話なんだか、社会人としてのあり方なんだかよくわからないが説得力がある。新潟と秋田ではこれが同じ競技なのかと思うほど違った戦い方をしているが、どちらも結果につながっているのがサッカーのおもしろさ。
October 19, 2021