●20日夜は東京オペラシティで、レオニダス・カヴァコスのヴァイオリンと萩原麻未のピアノによるブラームスのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会。レコーディングではユジャ・ワンと同曲集をリリースしているカヴァコスだが、今回は萩原麻未との共演が新鮮。カヴァコスの来日が予定通り実現したのはうれしい。前半にヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」と同第2番、後半に同第3番。ステージ上にふたりのアーティストが登場した後、そっと後ろから姿を現した譜めくりが、なんとヴァイオリニストの成田達輝。ピアニストと譜めくりで夫婦共演が実現。マスクをしてそっと出入りしてても、やっぱりアーティストは裏方には見えないものだなと実感する。
●前半、カヴァコスは以前にリサイタルで聴いたときよりも、ヒリヒリした雰囲気がいくぶん後退して、肩の力が抜けた様子。潤いのある豊かな美音、無理のない端正な表現で作品の核心に迫る。求道者のような雰囲気は変わらず。ヴァイオリン・ソナタ第2番、のびやかな自然賛歌の音楽で交響曲第2番とよく似た雰囲気を感じるけど、ちがうのは最後に訪れるのが熱狂ではなく平安というところ。ピアノはソリストに寄り添う姿勢で、リスペクトしすぎかなと思わなくもなかったが、後半の第3番になると双方ともに白熱してスリリングな展開に。やはり3曲のなかでは第3番が抜群に聴きごたえがある。アンコールはこのプログラムから期待される通り、「F.A.E.ソナタ」のスケルツォ(レコーディングでも弾いていたので)。時節柄ブラボーは出ないわけだが、最後はスタンディングオベーション多数で、客席は大いに盛り上がった。
●NHKのテレビ収録あり。
October 25, 2021