●22日は東京芸術劇場でヘルベルト・ブロムシュテット指揮NHK交響楽団。曲はグリーグの「ペール・ギュント」組曲第1番とドヴォルザークの交響曲第8番。今季の池袋Cプログラムは少し変則的な開催方式で、19時30分開演で休憩なし、プログラムは短め。開演時間を19時より遅くしてあまりうまく行ったためしはないけどどうなのかなあ……と一瞬思ったが、実は「開演前の室内楽」が久々に復活しており、そちらは18時45分からのスタートなのだ(出入り自由)。つまり、室内楽も聴こうと思ったら、通常の公演よりも早い開始になる。見方によって、開始時刻が通常より早いとも遅いともいえるのがミソ。
●で、この日の室内楽はマルティヌーのセレナード第2番というきわめて珍しい演目。となれば必聴。演奏者はこの日のコンサートマスターであるヴァイオリンの白井圭、ヴァイオリンの大林修子、ヴィオラの佐々木亮。低音楽器がない三重奏。セレナーデらしい軽快な娯楽作品でありつつ、マルティヌーならではの新鮮さもある佳品。重心が高くて、チェロが入れば一気に曲が落ち着くような気がするのだが、マルティヌーとしてはセレナーデらしさの実践として立奏可能な編成(実際に立奏だった)にこだわりたかったのかもしれないと想像。10分にも満たない短い曲だけど、貴重な機会でありがたい。
●で、本編は待望のブロムシュテットが登場! 94歳という年齢が信じられない。なんの助けも借りずにすたすたと歩いて登場し、そのまま指揮台で立って指揮をする。椅子もない。前回来日時よりもむしろ元気そうに見えるほど。そもそもこの年齢で日本とヨーロッパを往復していることがスゴすぎる。そして、音楽が始まればとことん純度を高めたブロムシュテット・サウンドがあふれ出す。特にドヴォルザークでの解像度の高さは尋常ではない。このホールでこれだけ清澄でしなやかなオーケストラの響きを聴いた記憶がないほど。あたかも第1ヴァイオリンは第1ヴァイオリンというひとつの楽器、第2ヴァイオリンは第2ヴァイオリンというひとつの楽器が鳴らされているのかと錯覚しそうになる。オーケストラ芸術の極致を体験した思い。
●拍手が鳴りやまず、指揮者のソロ・カーテンコールが2度もあった。チケットは完売。昨シーズンの空席だらけの客席を忘れてしまいそうになるほどの活況ぶり。
October 26, 2021