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November 8, 2021

クシシュトフ・ウルバンスキ指揮東京交響楽団のモーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス

●6日はミューザ川崎でクシシュトフ・ウルバンスキ指揮東京交響楽団。直近までどうなるかとやきもきしていたが、無事にウルバンスキの来日が実現。プログラムはモーツァルトの「魔笛」序曲、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番(児玉麻里)、ブラームスの交響曲第4番。久々に聴くウルバンスキだが意外とクラシカルなプログラム。「魔笛」は序奏と爆速主部のコントラストが鮮やか。「魔笛」もベートーヴェンの協奏曲も、冒頭和音がノンヴィブラートの清澄な音色。ベートーヴェンでは児玉麻里の独奏が歯切れよく推進力にあふれ、ウィットにも富んでいる。硬質なタッチによる鋭敏なベートーヴェンだが、第2楽章での瞑想的な表現も絶美。これは名演。
●後半、ブラームスの交響曲第4番は楽器間のバランスやアーティキュレーション、ダイナミクス等、一般的な解釈とは異なる点が多々あって、古典の再構築感を存分に満喫できるスリリングな演奏。清新さのなかに手に汗握る興奮がある。ドイツの伝統に根差した重厚なブラームスを求める向きにはまったく受けないとは思う。ウルバンスキも最初に聴いた頃から十年以上経っていて、それなりの年齢になっているはずだが、相変わらず細身で、身のこなしは独特。指揮台上の不思議なロボダンス風の動きを目にすると、足を踏み外さないかとドキドキする。
●終演後の客席の反応はまだら模様といったところで、そそくさと退場する方もいれば、舞台上から楽員がいなくなっても熱心に拍手を続ける方もいて、納得の賛否両論。ソロカーテンコールになりそうな様子だったが、分散退場のアナウンスが始まって実現せず。