●13日はサントリーホールでクシシュトフ・ウルバンスキ指揮東響。プログラムはシマノフスキのヴァイオリン協奏曲第1番(弓新)とオルフの「カルミナ・ブラーナ」。シマノフスキは当初ボムソリが独奏者に予定されていたのだが入国制限の影響で出演できず、代役に弓新。現在、北西ドイツ・フィル第2コンサートマスターを務める。シマノフスキを曲目変更なしに乗り切れたのはすばらしい。めったに聴けないようでいて、実は東京では案外聴く機会の多い曲という気もするが、それでも感謝するしか。この曲の冒頭、素直に聴けば鳥のさえずりなんだろうけど、なんだか祭囃子的な諧謔味を感じて妙に刺さる。独奏は管弦楽と一体となって作品の魅力を雄弁に伝える。色彩の洪水、濃密なロマンに眩暈。
●後半のオルフ「カルミナ・ブラーナ」はこれまでに聴いたことのないような新鮮な演奏。まず合唱団の人数の少なさにびっくり。これは時節柄による制約だが、P席に陣取った新国立劇場合唱団が総勢で48人。さらにLAブロックを開けて東京少年少女合唱隊が配置されるのだが、こちらは12名ほど。ディスタンスたっぷりの少数精鋭仕様。独唱陣はソプラノに盛田麻央、テノールに彌勒忠史、バリトンに町英和。さすがにここまで合唱が少ないと迫力が不足するか……と思いきや、むしろ少人数ならではの機動力や輪郭のくっきりした表現がウルバンスキの狙いにぴたりとはまった感があった。土の香りや猥雑さを剥ぎ取って現れたのは、清新さとユーモアを身にまとった「カルミナ・ブラーナ」。切れ味鋭く、躍動感と透明感があってみずみずしい。
●第7曲「気高き森」のところだったかな、合唱団が体を左右に揺らしながら歌う演出あり。あと第12曲の「白鳥丸焼きソング」では彌勒忠史がオペラばりの演技付きで舞台袖から登場。手に持っていたのは白鳥のぬいぐるみ? 続く町英和の堂々たる酔っぱらいぶりなど、なんともいえない可笑しみがあって大吉。ウルバンスキ流の洗練あってこそ、ベタな仕掛けがユーモアとして機能するんだと思う。あと、合唱団の人数は多すぎるよりは少ないほうがなにかとよいと確信。終曲で帰ってくる「おお、運命よ」に鳥肌。最後は盛大な拍手から、ソロカーテンコールとスタンディングオベーションへ。忘れがたい公演になった。
November 15, 2021