●18日は東京芸術劇場でファビオ・ルイージ指揮NHK交響楽団。2022年9月よりN響首席指揮者に就任するルイージが予定通り来日。隔離期間の関係なのか、先に開かれたAプロはルイージから沼尻竜典に指揮者が変更されたが、この日のCプロと続くBプロは予定通りにルイージが登場することに。
●で、池袋Cプロは変則的で、19時30分開演で休憩なし。プログラムはブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」のみ。開演が遅くても、終演が遅くならないのは救い。これだけだとあっさりしているが、開演に先立って18時45分からN響メンバーによる「開演前の室内楽」がある(15分程度、トーク入り)。この室内楽の演奏中は出入り自由。室内楽から聴く人にとってはふだんの演奏会より開始が早いというのがミソ(って話は先月も書いたか)。
●今回はブルックナーの弦楽五重奏曲から第3楽章を演奏してくれた(宇根京子、大宮臨太郎、佐々木亮、坂口弦太郎、宮坂拡志)。室内楽コーナーであまり聴けない作品を聴けるのは大きな楽しみで、これがあるとないとでは大違い。本編のプログラムと違って、出入り自由のリラックスした環境で聴けるのも吉。ブルックナーの弦楽五重奏曲、第3楽章はアダージョ。そのまま交響曲の緩徐楽章になりそうな深みのある崇高な音楽。そもそもこの曲自体が交響曲的なので、これを交響曲にパワーアップさせることができるんじゃないか……というのはみんな思うだろうし、実際に編曲した人がいたような気がする。
●本編のプログラムは、管楽器が先に座っているところにルイージがひとりで登場して、その後、弦楽器も入場するというウイルス禍の変則仕様。ルイージは棒を持たずに指揮。明るく温かみのあるサウンドによる、しなやかで流麗なブルックナー。いかめしさや宗教的な恍惚感は控えめで、まろやかな響きと歌心にあふれた自然賛歌の音楽。先月のブロムシュテットでも思ったんだけど、N響と芸劇の音響の相性がよくなっているというか、うまく最適化されていると感じる。芸劇は反響板を下ろした状態で、これだとかなりコンパクトな空間になる。本来の本拠地NHKホールとはまるで条件が違う。NHKホールの改修工事が終わったら、もう芸劇は使われないのだろうか。すっかり芸劇の心地よさに慣れてしまった。駅からも直結してるし。
●曲が終わると、すぐに楽員が先に退場して、ルイージがひとり残って喝采を受ける強制ソロカーテンコールに。隔離の都合でしょうがないんだろうけど、個々のプレーヤーを讃える機会がないのは寂しい。
November 19, 2021