November 24, 2021

トロールの森 2021

トロールの森2021
●「トロールの森」は杉並区の都立善福寺公園を中心に西荻窪周辺エリアで展開される野外アート展。昨日で会期は終了したのだが、善福寺公園の展示を見たので振り返っておこう。公園のあちこちに作品が点在しており、展示を目的に来たというよりは、公園に散歩しに来た人たちが「あれ、なんだろう?」と作品を眺める雰囲気。毎年のように足を運んでいるのだが、率直なところ、作品の過半は公園そのものが放つ強烈な輝きの前に霞んでしまっている。それも無理はない話で、草木や花の造形が持つ無限のバリエーションと精妙さ、四方から聞こえる小鳥のさえずり、池に棲息するサギやカワウの優雅さ、数種のカモたちやカイツブリらの興味深い生態といった神々のクリエーションを前にすると、アート、というかアーティフィシャルなもの全般がいかにも脆弱に見えてしまうのはしかたがない。それでも、いくつかこれはと思える作品がある。
土器文字「スーハー」
●まず、土器文字「スーハー」(小野真由)。土器によるおびただしい数の「スーハー」が地面を覆っている。まるでワタシたちの吐いた息がそこに落下したかのよう。どこにもそうは書いていないけれど、連想させるのはマスク。今、屋外の公園であっても全員がマスクをして散歩している。そんな奇妙な状況が呼吸という行為に意識をフォーカスさせる。今回の「トロールの森」のテーマは「深く息をする」。
Water Laboratory 「リズム」
●Water Laboratory 「リズム」(栗田昇)。水の流れにより水車が動き、心地よいリズムで音を発する。水車の動きはスムーズでほとんどエレガントといってもよく、発せられる音も公園の風景に無理なくなじむ。軽い作品が多い中で、創意という点で際立っていた。自然に対抗できるのは、自然の模倣ではなく、エンジニアリング。
「ちゅーリップ」
●「ちゅーリップ」(永林香穂)。このチューリップには口がある。散歩する人間たちがマスクをして、すっかり他人に口を見せる機会がなくなっているなかで、チューリップが唇を堂々とさらしている。「ちゅー」+「リップ」というネーミングもうまい。屋外だとこれくらいポップな表現のほうが、下手に樹木や草花と絡もうとするよりもよほど効果的だと思った。明るさ、開放感が吉。

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