●26日はサントリーホールでマリオ・ヴェンツァーゴ指揮読響によるモーツァルトのピアノ協奏曲第20番(ゲルハルト・オピッツ)とブルックナーの交響曲第3番(第3稿/ノヴァーク版)。これは近年まれに見る快演。ヴェンツァーゴのブルックナー、CPOレーベルでのタピオラ・シンフォニエッタやノーザン・シンフォニアといった室内管弦楽団を起用した録音が目をひいてはいたものの、サイズに制限のない読響との共演となるとはたしてどんな化学反応が起きるのか、あるいは起きないのかと思いつつ足を運んだところ、期待をはるかに上回る充実度。キレと弾力性のあるリズム、澄明な響きに支えられた躍動するブルックナーで、モッサリ感ゼロ。金管楽器のバランスも特徴的で、ときには抑制させ弦楽器に重心を置き、ときには咆哮させる。決して淡白ではなく、随所にグッと来るような「決めポーズ」もあり。湿気がなくカラッとしたシリカゲル入りブルックナーで、なんてカッコいい曲なんだと改めて感心。ヴェンツァーゴは痩身白髪、外見はおじいさん巨匠指揮者風なのに音楽はフレッシュ、キャラも割と明るいっぽい。最後の一音が終わったら一秒と待たずにサッサと手を下ろし、客席に向かって両手を広げてどうだとばかりにポーズ。棒を止めて沈黙を求めないのはひとつの美学だと思う。最強の楽しさだったので、ぜひ次は第5番あたりを希望。
●カーテンコールで早々に席を立つ人も目立ったが、ヴェンツァーゴのソロ・カーテンコール~スタンディングオベーションまで拍手を続ける人も多数。
●後半の印象が強烈すぎたが、前半のモーツァルトも聴きごたえあり。出演者変更により予定外にオピッツを聴くことになったが、20世紀の伝統を格調高く今に伝えるモーツァルト。読響も独奏者に応えて重厚なテイスト。
November 29, 2021