●15日は池袋の東京芸術劇場で原田慶太楼指揮NHK交響楽団。ソリストに反田恭平を迎えて、とても凝ったプログラム。前半がショパン~グラズノフの「軍隊ポロネーズ」管弦楽版とショパン~ストラヴィンスキーの夜想曲変イ長調op32-2管弦楽版、パデレフスキのポーランド幻想曲(反田恭平)、後半にストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」(1910年版)。なにしろショパン・コンクールで話題沸騰の反田恭平がショパンではなくパデレフスキを弾き、オーケストラがショパンの管弦楽編曲を2曲演奏するというこの微妙なずらし具合と来たら。痛快。ショパンの編曲者はともにロシア人で、後半はそのひとりストラヴィンスキーの「火の鳥」。前半の管弦楽編曲とはバレエつながりでもある。バレエ、ディアギレフ、ポーランド、ロシアといったキーワードが浮かび上がる。コンサートマスターは白井圭。
●客席の雰囲気はいつものN響定期とはだいぶ違っていて、女性の割合が多い。休憩中もなんだかあちこちで華やいでいてる。チケット完売はN響定期では珍しくないが、本当に客席が埋まっているのは壮観。舞台上も大編成で賑やかなら、客席もぎっしりで熱気が立ち込めていて吉。
●弦楽器は対向配置。指揮棒使わず。前半、「軍隊ポロネーズ」はショパンが聴いたら気を悪くしそうな編曲だが(想像)、勇壮で豪快。パデレフスキのポーランド幻想曲は生では初めて。これは楽しい。きらびやかなソロが大活躍、土の香りと華やかさが渾然一体となっている。ソリスト・アンコールはショパンのマズルカ ロ長調作品56‐1。さすがにアンコールはショパンだった。スターの風格が漂っている。後半は「火の鳥」(1910年版)。「火の鳥」、よく演奏される1919年版の組曲は完璧な作品だけど、効率重視でさっさと用件だって言って立ち去っていく人みたいな感じがするのに対して、この全曲版はワーグナーチューバやトランペットのバンダがあったりと巨大編成で、饒舌さに魅力がある。N響のサウンドはリッチで壮麗。ソロも巧み。筆圧の強いタッチで描いた鮮烈な「火の鳥」だった。
January 17, 2022