●28日は渋谷区文化総合センター大和田のさくらホールで「Don't Stop The Music 一夜限りの若者たちの祭典2022」と題された公演。林周雅がコンサートマスターを務める弦楽オーケストラを米田覚士が指揮、ソリストにピアノの實川風とトランペットのオッタビアーノ・クリストーフォリが参加。林周雅はテレビ朝日「題名のない音楽会」の「題名プロ塾」で脚光を浴び、クラシックでもポップスでも活躍する新鋭。米田覚士は前回の東京国際音楽コンクール入選、實川風はロン・ティボー・クレスパン国際コンクール第3位、クリストーフォリは日本フィルのソロ・トランペット奏者。弦楽オーケストラのサイズは64332、だったかな。若い世代の優秀な奏者たちが集まっている様子。
●時節柄、プログラムは変則的で、チャイコフスキーの弦楽セレナードとショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番を休憩なしで演奏する短縮プロ。チャイコフスキーの冒頭からすごかった。耳を疑うような重厚で気迫のこもった音。少数精鋭のヴィルトゥオーゾ集団といった趣で、これだけ高水準の弦楽オーケストラを聴く機会などそうそうない。覇気がみなぎっていて、鋭敏精緻、しかも情感豊か。米田は棒を持たずに明快な指揮ぶり、メンバーとの一体感が伝わってくる。続くショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番では、トランペット奏者が前に立って演奏、ピアノとトランペットの二重協奏曲であることを前面に出すスタイル。こちらもソリストとオーケストラともどもキレッキレで、シニカルな味わいを存分に楽しめた。本編はこれでおしまい、いったん全員が退出して拍手も止んでしまったのだが、そこからヴァイオリンとピアノでラフマニノフのヴォカリーズ。こちらは本編とはがらっと雰囲気を変えてサロン風のリラックスした演奏。内容の充実度に反して、客席がソーシャルディスタンス仕様で空席が多かったことだけが残念だが、現状の東京での感染爆発ぶりを考えると先見の明があったと言うべきか。
January 31, 2022