●9日は紀尾井ホールで国際音楽祭NIPPON2022の諏訪内晶子室内楽プロジェクト。音楽祭の音楽監督である諏訪内晶子が仲間たちと「クラシック」と「モダン」の2公演にわたって室内楽を演奏する。この日は「クラシック」の一夜。生誕200年のフランクを中心に置きつつ、ファニー・メンデルスゾーン、クララ・シューマンといった女性作曲家にも光を当てる。出演は諏訪内晶子、マーク・ゴトーニ(ヴァイオリン)、鈴木康浩(ヴィオラ)、辻本玲(チェロ)、阪田知樹(ピアノ)。
●プログラムは前半がモーツァルトのヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲ト長調、ファニー・メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲変ホ長調、クララ・シューマンの3つのロマンス(諏訪内+阪田)、後半がフランクのピアノ五重奏曲ヘ短調。普段はあまり聴けない曲を最上のクオリティで聴けたという充足感あり。ファニー・メンデルスゾーンは意外とアグレッシブで、とりわけ終楽章がスリリング。クララ・シューマンはやっぱりロベルトに似ているなと思う。が、ロベルトのような危うさは感じないかな。後半の前に舩木篤也さんが登場して、諏訪内さんと音楽祭のことや各作曲家の魅力についてインタビュー。舩木さんは開演間にもトークを務める活躍ぶり。
●後半のフランクは圧巻。ピアノ五重奏曲、これまで録音で聴いても今一つ地味な印象を持っていたが、こんなに傑作だったのかと改めて知る思い。交響曲ニ短調と同じような世界を描いているのだが、より野心的というかスケールが大きい。濃密で憂鬱なロマン、強烈な匂い、うねりと高揚。ダサカッコイイの極致。微妙に前夜の読響で聴いた諸井三郎と通じているという奇遇。豊かなパッションにあふれた、フランク記念の年にふさわしい名演を堪能。
March 10, 2022