March 25, 2022

オーストラリア対ニッポン@ワールドカップ2022カタール大会 アジア最終予選

オーストラリア●最終予選もいよいよ大詰め。アウェイのオーストラリア戦という難関を迎えた。勝てばニッポンはW杯出場決定、引分けでも残った最終節がホームのベトナム戦であることを考えると、かなり有利な状況。ニッポンは大迫、前田大然、古橋、冨安、酒井など多くのメンバーを欠くが、それ以上にオーストラリアも台所事情が苦しい様子。どんな結果もあり得ると思えた試合だが、オーストラリア 0対2 ニッポンで、なんとニッポンが完勝、ワールドカップ本大会出場を決めた。最終予選の序盤は1勝2敗で窮地に立たされていたのに、そこから6連勝はすごい。普通は最終予選ともなると相手が一段格下であっても引分けくらいは何試合か出るものだが(実際ライバルたちはそうなった)、ニッポンは引分けゼロで効率的に勝点を積みあげたのが大きい。ニッポンのメンバーはGK:権田-DF:長友(→中山雄太)、吉田、板倉、山根視来-MF:遠藤-守田、田中碧(→原口)-伊東、南野(→三笘)-FW:浅野(→上田綺世)。
●試合は異様な雰囲気で始まった。本来なら、オーストラリアがハイテンションで攻め込み、ニッポンが慎重に戦うのが普通。ところが、勝てばワールドカップ本大会出場が決まるという状況のためか、開始早々からとんでもなくオープンな攻め合いになってしまった。次々とニッポンがチャンスを作る。そして次々とピンチがやってくる。選手間の距離が序盤からこんなに開くとは。オーストラリアは右サイドで待ち構えるルスティッチにボールが出ると、ことごとくチャンスになる。南野は前半だけで何本シュートを打ったのか。でも入らない。オーストラリアは空中戦で勝利して、ニッポンのオウンゴールを誘発して先制……のはずだったが、主審が笛を吹いてファウルでゴールを取り消した。でも、ファウルはなかったと思う。狂騒的な前半だったが、不思議にもスコアは0対0。おかしな試合展開だった。
●後半、森保監督が選手たちを落ち着かせたのか、ノーマルな試合展開に。雨で芝が重く、空中戦を挑まれると嫌だと思っていたのだが、時間とともにオーストラリアのプレイ強度が下がっていった感。残り時間わずかになった後半44分、山根が敵陣深くに侵入し、守田とワンツー、縦に抜けた山根がゴールラインぎりぎりでマイナスのパス、これを予測したように走り込んだ三苫が蹴り込んでゴール。これでもう決まりではあったが、アディショナルタイムの後半49分、今度は三苫が完全な個人技で、左サイドで一瞬の加速で相手を置き去りにして、そこから鋭く中央に切れ込んでそのままシュート、キーパーの手を弾いて2点目。三苫の得意の型。初めて対戦する相手はなかなか止められない。気がつけば(元)川崎フロンターレ勢が2点を奪ってくれたわけで、Jリーグでは鬱なほど強かった敵が、味方になるとこんなにありがたいことを知る。
●序列重視の森保監督だが、何人かの選手が不在だったこともあり、今回はフレッシュな選手たちが躍動する姿を見ることができた。選手層の厚さで相手を勝ったともいえる。こんな重要な試合でも「リリーフ左サイドバック」みたいに中山が長友と交代出場するのがおかしな感じだが、これは前半に長友がイエローカードをもらっていたのが大きい。選手たちの喜ぶ姿は感動的。みんな重圧から解放されている。オーストラリア代表のディフェンスに元マリノスの ミロシュ・デゲネクがいた。現在はアメリカでプレイしているそう。フォワードのミッチェル・デュークはJ2の岡山に所属。
●ところでこの試合、テレビ放送がなかった。放映権が高騰して、テレビ局はホームの試合しか中継できなかったのだ。しかしオーストラリアならアウェイでも時差はわずか。もし中継していたらすごい視聴率になったはず。これほど重要な試合が、DAZNのネット配信でしか観られないのは、サッカー界にとって大きな損失だろう。でも、DAZNが放映権をテレビ局に再販しないのも当然のことなのだ。もし売ってしまったら、これが目当てでDAZNに加入したファンはもう二度と加入してくれなくなる。DAZNもがまんして筋を通した。じゃあ、だれが得をしたのかといえば放映権を売ったAFCなのだろう。でもこれは本質的に未来の利益を先食いしているだけなんじゃないか。こんなことを続けていたら、サッカーは一部のマニアだけのものになるし、一般の人はスター選手の名前も知らなくなる。
●あと、DAZNの中継で岡田武史さんの言葉がふるっていた。序盤で批判された森保監督の話題になって、「批判されると人は成長する。でもおもしろいことに、批判する人は成長しない。批判する人は自らの成長を投げ打ってまで自分を成長させてくれるのだから、ありがたいものなのだ」と。日本サッカー界でこの人ほど強烈に批判され、そして大きくなった人はいない。

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