April 12, 2022

藤田真央ピアノ・リサイタル アンコール公演

●11日は東京オペラシティで藤田真央ピアノ・リサイタル。「アンコール公演」と銘打たれているのは、1月に開かれたリサイタル(ワタシは聴き逃した)のアンコールという意味のようで、1月と後半のプログラムが同じで、前半は違っている。それでもチケットは完売の人気ぶり。この日の前半はモーツァルトのピアノ・ソナタ第17番(従来の番号は第16番)変ロ長調、シューベルトの「3つのピアノ曲」D946、後半はブラームスの「主題と変奏」ニ短調、クララ・シューマンの「3つのロマンス」op.21、ロベルト・シューマンのピアノ・ソナタ第2番。前半はウィーン・プロ、後半はシューマン一家(拡張版)プロというべきか。これまでに足を運んだリサイタルもそうだったが、いつもプログラムがおもしろい(自分が聴いた前回はリヒャルト・シュトラウスのピアノ・ソナタだったし、その前はスクリャービンの「幻想ソナタ」がラストだった、と記憶)。
●モーツァルトのソナタはレコーディングや全曲演奏会で藤田真央が精力的に取り組むレパートリーだが、一曲弾くのにこの曲を選ぶとは。かなり簡潔な曲だけど、早すぎた晩年様式といいたくなるような枯れた味わいにややエキセントリックな風味が加わる曲想が吉。後半はクララに献呈されたブラームスの「主題と変奏」と、ブラームスに献呈されたクララの「3つのロマンス」を並べておいて、最後に旦那のロベルトが殴り込む(違うか)みたいな三角関係プロになっている。クララ・シューマンの3つのロマンスは1曲目と2曲目がロベルトの世界に近いように感じるのだが、3曲目が独特。アジタートと記されている割にはサロン的か。この曲から同じト短調のロベルトのピアノ・ソナタ第2番にアタッカで突入。これがドラマティックで効果抜群。狂熱的なパッションが噴出する第1楽章が終わると、場内から思わず拍手が出た。わかる。表現の振幅を大きめにとった熱く情感豊かな演奏はこの日の白眉で、ロベルトならではの崖っぷちの焦燥感を堪能。
●アンコールは盛りだくさんで、モーツァルトのロンド ニ長調、ラヴェルの「ハイドンの名によるメヌエット」、バッハ~ラフマニノフの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番よりガヴォット、ブラームスの「6つの小品」よりロマンスOp.118-5。お客さんは圧倒的に女性が多く、しかも若い。小学生連れのお母さんの姿もちらほら。客席の集中度は高い。

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