●12日は東京・春・音楽祭で国立科学博物館へ。地球館2階常設展示室で開催された落合真子のヴァイオリン・リサイタルを聴く。東京藝大在学中、第90回日本音楽コンクール第2位の新鋭。ピアノは日下知奈。プログラムが魅力的。前半は古典派でモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第22番イ長調とベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番「春」、後半はイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第6番と「子供の夢」、リヒャルト・シュトラウスのヴァイオリン・ソナタ変ホ長調。後半が断然おもしろい。イザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第6番が圧巻。切れ味鋭く鮮やか。シュトラウスは豊麗で高揚感にあふれ、楽想の雄大さを存分に伝えてくれる。
●シュトラウスのヴァイオリン・ソナタは1888年作曲だから、作曲者24歳の年。交響詩「ドン・ファン」以前の曲だけど、すでにどう聴いてもシュトラウスの音楽で、特に両端楽章はオーケストラ的というか、4管編成くらいの壮大なサウンドを連想させる。中間楽章はオペラ的な歌の音楽。ここに織り込まれている追憶や憧憬といった表情は遠く未来の「ばらの騎士」までつながっているんじゃないだろうか。
●ミュージアム・コンサートの魅力は演奏者との距離の近さ、残響に包まれない直接音の生々しさ、会場の非日常性などいくつかあるわけだけど、この公演のように本当に博物館の展示物が並んでいるなかで聴ける公演はなかなか貴重。しかも帰り際に科博の招待券も一枚プレゼントしてくれるのがうれしい(上野の科博でも使えるし、白金台の附属自然教育園でも使える)。お得。以下は同会場に展示してあるH-I国産ロケットの第2段エンジン、LE-5。シュトラウスの音楽によく似合うぜー。ドドドドド……(心の中で点火)。
April 13, 2022