●18日は東京文化会館小ホールで東京・春・音楽祭の柴田俊幸(フラウト・トラヴェルソ)&アンソニー・ロマニウク(チェンバロ/フォルテピアノ)。会場は満席とはいかなかったが、業界関係者は多数つめかけていた。みんなが柴田俊幸に注目しているのがよくわかる。ベルギー在住のフルート&フラウト・トラヴェルソ奏者で、ラ・プティット・バンド他の古楽アンサンブルに参加、コロナ禍での「デリバリー古楽」プロデュース、たかまつ国際古楽祭芸術監督、レコーディングなど多方面で活躍し、メディアへの登場機会も多い。FREUDEでのインタビュー(前編/後編)がおもしろいので超絶オススメ。
●で、プログラムは古楽あり即興あり現代音楽ありで、くらくらするほど多彩。ステージ上にはチェンバロとフォルテピアノ(ジルバーマン)が置かれているのは想定内として、その間にある楽器はなんだろう……と思ったら、フェンダー・ローズなんだとか(電気式ピアノといえばいいのかな。自分の理解では電子楽器ではなく電気楽器)。バッハのフルート・ソナタを核としつつも、フィリップ・グラス、チック・コリア、リゲティ(チェンバロのためのハンガリアン・ロック)、エマヌエル・バッハ、クルターグ等々が並ぶプログラムは、まるで東京オペラシティのBtoCシリーズみたいだが、曲と曲が即興演奏でつながれるのが効果抜群。あらかじめ用意されたプログラムの再現ではなく、今その場で生み出される音楽を味わっているのだと実感できる。楽器の使い方も自由。バッハをフォルテピアノで弾くのはありうるだろうが、なんと、フェンダー・ローズでも。これがまたノリノリで楽しい。楽器とレパートリーを自在に往来するも、脈絡のないものを聴いた感覚はなく、むしろプログラム全体がひとつの作品だったかのよう。
●ブリン・ターフェルがPCR検査で陽性となって来日できなくなったため、これで今年の東京・春・音楽祭は閉幕。掉尾を飾るにふさわしい痛快な公演だった。
April 19, 2022