●(承前)リニューアルオープンした国立西洋美術館の常設展から、続いてはヒリス・ファン・コーニンクスローの「パリスの審判が表された山岳風景」。トロイア戦争はいろいろな音楽作品の題材になっている(参照:ONTOMO拙稿 神話と音楽Who's Who 第6回)。戦争の発端となったのがパリスの審判だ。ゼウスに命じられて、羊飼いパリスはヘラ、アテナ、アフロディテの3人の女神からいちばん美しい者を選ぶ。選ばれたのはアフロディテ。だが、この絵画はどうだ。肝心のパリスの審判の場面は左下の隅に描かれるだけで、主役は山であり森だ。山は神話世界すら矮小化してしまう。神話を作ったのはしょせん人間。山を作ったのは人間ではない。そんなことも考えてしまう。
●常設展と合わせて新館1階の第1展示室で「調和にむかって:ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジ ― 大成建設コレクションより」が展示されている。ル・コルビュジエといえば国立西洋美術館本館の設計者。音楽ファンにとってはクセナキスの建築の師として耳にする機会が多い。でも画家でもあったんすね。約20点の作品が展示。上は「女性のアコーディオン弾きとオリンピック走者」。楽器とスポーツという異質なモチーフの並列がおもしろい。一瞬、アコーディオン奏者がテレビでオリンピックの陸上競技を観ているのかと思うが、1932年の作品なのでテレビはまだない。アコーディオンの蛇腹の上方で選手が走っている様子がどことなくユーモラス。
April 27, 2022