●30日は東京オペラシティでアレクサンドル・カントロフのピアノ・リサイタル。偶然にも昨夜のガジェヴに続いて、若い世代を代表するピアニストのリサイタルが同じ会場で続いた。アレクサンドル・カントロフは2019年のチャイコフスキー・コンクールの第1位(第2位が藤田真央だった)。お父さんはジャン=ジャック・カントロフ。あまりに父が有名だったが、でも今や「カントロフ」といえばアレクサンドル。
●プログラムはリストを中心として、そこにシューマン、スクリャービンらが織り込まれたもの。前半にリストのJ.S.バッハのカンタータ「泣き、嘆き、悲しみ、おののき」BWV12による前奏曲、シューマンのピアノ・ソナタ第1番、後半にリストの巡礼の年第2年「イタリア」から「ペトラルカのソネット」第104番、リスト「別れ」(ロシア民謡)、「悲しみのゴンドラ II」、スクリャービンの詩曲「焔に向かって」、リストの巡礼の年第2年「イタリア」からソナタ風幻想曲「ダンテを読んで」。全体がひとつの作品のような趣で、別れと悲しみ、超越性を題材にしたロマン主義の大作に触れたかのよう。重厚で濃密。前夜のガジェヴもそうだったけど、カントロフも高い技術を持ちながらも、華やかさやテクニックで魅了するのではなく、作品世界に深く没入し、楽器の存在を感じさせない。白眉は前回のリサイタルでも聴いた「ダンテを読んで」。凄まじい集中力。細身ながらも楽器を鳴らしきった強靭なフォルテが響きわたり、色彩感も豊か。
●本編だけでも満足できたと思うけど、アンコールが「第3部」になった。グルック~ズガンバーティ「精霊の踊り」、ストラヴィンスキー~アゴスティの「火の鳥」フィナーレ、ヴェチェイ~シフラ「悲しきワルツ」、ブラームスの4つのバラードから第2曲、モンポウ「歌と踊り」op.47-6、ブラームスの4つのバラードから第1曲。はりつめた雰囲気の本編とはまた違った楽しみ。休憩中にカーテンコールは写真撮影OKというアナウンスがあったので、写真も撮ることができた。あわてて撮ったのできれいに撮れていないけど、なによりのお土産。
July 1, 2022