●映画館で「怪盗クイーンはサーカスがお好き」(はやみねかおる原作/傳沙織監督)を観る。これは快挙。「怪盗クイーン」シリーズといえば児童文学の大人気シリーズ。2002年の第1作から2021年の近作まで15巻にわたるシリーズが講談社「青い鳥文庫」から刊行されており、累計発行部数は120万部を突破したのだとか。この数字は驚異的。というのもこういった児童文学では多くの場合、子供たちは図書館を通じて本を読んでいるわけで、実際の読者数は発行部数より桁違いに多いはず。そのシリーズの第1巻である「怪盗クイーンはサーカスがお好き」がアニメ化されたんである。人気コミックの映画化ではなく、小説の映画化というところがミソで、相当高いハードルを飛び越えている感がある。夜の時間帯の客層は若い女性が多かった。20年にわたるシリーズなので、ファン層は現在の30代初めから小学生まで広がっていると思われる。
●主人公のクイーンはあらかじめ犯行予告をした上で警備を出し抜いて華麗に獲物を盗み出すという古典的な美学を実践する怪盗。風貌やふるまいは美しく洗練されているが、趣味はネコの蚤取りだったりとキャラのギャップがおかしい。職務上のパートナーである黒髪碧眼のジョーカー、そして世界最高の人工知能のRDとともに、巨大飛行船トルバドゥール号に乗って世界中を巡る。ギャグ満載で、ストーリーは痛快。軽快さが身上だと思うので、映画化にあたって話を膨らませるのではなく、1時間の短尺に収めているのも吉。秀逸。
●で、いちばんいいなと思ったのは、怪盗クイーンの性別が不詳だという点。設定としてそうなっている。中性的な役柄で、映画での声優は元宝塚の大和悠河。オペラで言えばズボン役みたいなイメージだ。怪盗一味の中心人物が性別不詳で、その助手は男性と人工知能。これこそ今の時代の怪盗だなって気がする。
July 12, 2022