●16日は東京オペラシティでバッハ・コレギウム・ジャパン第150回定期演奏会。ハイドンのオラトリオ「天地創造」を鈴木優人指揮、ジョアン・ランのソプラノ、櫻田亮のテノール、クリスティアン・イムラーのバスで。「天地創造」を生で聴くのは久々。神様もそうひんぱんに天地を創造していられないとは思うのだが、あらためてその音楽の壮麗さと力強さに圧倒される。このオラトリオは歌詞と音楽の結びつきが強く、その描写性に時折ユーモアも感じる。鈴木優人指揮のオーケストラは推進力が豊かで、生気がみなぎっている。ホルンに福川伸陽、トロンボーンに清水真弓、ティンパニに菅原淳、フォルテピアノに大塚直哉ら実力者ぞろいの管弦楽。コンサートマスターの若松夏美が都合により出演できず、山口幸恵に変更するなど、何人か出演者の変更があった。ジョアン・ランはじめ、声楽陣も充実。
●で、「天地創造」って3部構成なんすよ。第1部は第1日から第4日まで。冒頭で、混沌の描写から天と地が生まれる様子が描かれる。第2部は第5日から第6日までで、生命が誕生し、やがて人間が作られる。第3部は楽園でアダムとイヴがハッピーに暮らしている。つまり、全体の構成はこういう感じ。
「天地創造」第1部 ハードウェア製作編
「天地創造」第2部 ソフトウェア開発編
「天地創造」第3部 ユーザーエクスペリエンス編
神様が天地を創造しているのは第2部までなんすよね。第3部はもう作っていない。というか、本質的には第1部の冒頭で天と地はもう作ってしまっていて、その後はディテールの製作。常々思っているんだけど、モノ作りのスタイルにはロケットスタート型とラストスパート型があると思うんすよね(原稿書きでもそうだけど)。ロケットスタート型は工期の序盤で粗くてもいいから8割方作ってしまって、残り期間で完成度を上げていくイメージ。ラストスパート型は前半はなかなか手が進まないんだけど、終盤の集中力でガッと完成まで持っていく。どうやら西洋の神様はロケットスタート型。仕事ができる人って感じがする。
●旧約聖書で神様は6日目で人間を作っている。ひるがえって現実の神様はどうかというと、天地創造をビッグバンとみなせば推定138億年前。現生人類の誕生は20万年前とすると、宇宙の歴史に比べればゼロみたいなものなので、結局人間を作るまで138億年かかったとも言える。だから現実の神様はラストスパート型……と言いたいところだが、よく考えてみたら人類の前にもあまたの文明を広大な宇宙のあちこちに創造しているだろうから、そう決めつけるわけにもいかないか。