●今年もフェスタサマーミューザKAWASAKIが開幕。新型コロナウイルスの第7波でかつてない感染者数が記録されるなか、23日、無事に開幕公演が行われた。ジョナサン・ノット指揮東京交響楽団によるプログラムは、このコンビならではの凝ったもの。冒頭に三澤慶「音楽のまちのファンファーレ~フェスタ サマーミューザ KAWASAKIに寄せて」が演奏された後、クルタークの「シュテファンの墓」(鈴木大介のギター)、シェーンフィールド「4つのパラブル」(中野翔太のピアノ)、休憩をはさんでドビュッシーの第1狂詩曲 (吉野亜希菜のクラリネット)、ストラヴィンスキーのタンゴ、エボニー協奏曲 (谷口英治のクラリネット)、ストラヴィンスキー「花火」、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」。「おいしいものを少しずつ」みたいなプログラムで、高級お菓子の詰め合わせのよう。やたらとリソースを要求するプログラムでもあって、ソリストが大勢いて、しかも大編成の曲が多い。クラリネットのソリストが2名もクレジットされるとは(ひとりは楽団員、ひとりはジャズクラリネット奏者)。ギタリストはクルタークの後もオーケストラのなかに留まり、シェーンフィールドではベースも。これだけいろんな編成の曲が続くと、舞台転換にかなり時間をとられるので終演時間は遅くなるだろう……と予測していたのだが、パズルを解くかのような鮮やかな手際できっちり2時間で終わった。
●「音楽のまちのファンファーレ」、こういったファンファーレでもノットが振ると勢いとキレのある音楽になる。いちばん長い曲という意味では、前半のシェーンフィールド「4つのパラブル」が核。主にジャズテイスト、しかしながらジャンルレスな大編成のピアノ協奏曲。ピアノは八面六臂の活躍で、大音量のオーケストラと格闘をくりひろげながらもゴージャス。ある種の過剰さが痛快な音楽。ストラヴィンスキーの「タンゴ」と「エボニー協奏曲」はライブで聴く機会は貴重。イメージよりも厚みのあるサウンド。続けて若き日の「花火」を聴くと、その才気ときらめきにクラっとする。最後の「ラ・ヴァルス」は、もっとデフォルメ感のある演奏を予想していたが、むしろスマートで爽快。拍手が続いて、ノットのソロ・カーテンコールあり。音楽祭の開幕にふさわしい華やかさ。
July 25, 2022