August 4, 2022

イリヤ・ラシュコフスキー&小川典子 フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2022 [配信]

●今年もフェスタサマーミューザKAWASAKIはオンライン配信を実施中。アーカイブ配信もあるので、都合のつかなかった公演を後日聴けるのがありがたい。31日に開かれたイリヤ・ラシュコフスキーと小川典子のピアノによる「超絶技巧のロシアン・ピアニズム」を観る。プログラムはボロディン「だったん人の踊り」、ストラヴィンスキー「春の祭典」、ラフマニノフ「交響的舞曲」。すべて踊りの音楽であり、オーケストラの有名曲でもある。
●3曲ともにエキサイティングだったのだが、圧巻は「春の祭典」。当初、2台ピアノで演奏する予定だったところ、リハーサルの段階でより緊密なコミュニケーションをとれる連弾に変更されたのだとか。配信なので画も音も「近い」ということもあってか、これがすさまじい迫力。お互いの手の交差も頻繁で、猛スピードで難路を駆け抜けるレージングカーを見ているようなハラハラドキドキの連続。音楽的にも視覚的にもきわめてスリリング。マイクは譜めくりのペラリという音も逃さず、臨場感も尋常ではない。本来のオーケストラ版のダイナミックレンジや色彩感に代わって、リズムの弾力性や造形のシャープさ、小回りが利くゆえの敏捷性、そして民謡由来の歌心が前面に出てくる。
●ストラヴィンスキーに比べればラフマニノフはぐっとエンタテインメント性の高い音楽で、強靭かつゴージャスな響きを堪能。ワイヤーフレームで描画された骨格の見えるラフマニノフ。2台ピアノでも十分にカラフルな音楽であることを実感する。輝かしさ、躍動感はオーケストラ版の印象となにも変わらず。ボリューム感のある熱いプログラムだった。アンコールにラフマニノフの2台ピアノのための組曲第1番より第3楽章「涙」。
●配信ならではのオマケがあって、舞台袖のバックステージモニターが出演者の素顔をとらえているのがおもしろかった。ピアニストふたりの回だったので、お互いのやりとりがある分、生々しい感じ。舞台に出た瞬間にキュッとスイッチが切り替わる様子が伝わってくる。

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