August 22, 2022

セイジ・オザワ 松本フェスティバル 「フィガロの結婚」 ロラン・ペリー演出 沖澤のどか指揮

●21日は3年ぶりに松本へ。先日の諏訪に続いて、またしてもあずさに乗る。あずさを降りて、まつもと市民芸術館へ。もしかしたら東京より暑い。セイジ・オザワ松本フェスティバルでモーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」。演出はロラン・ペリーでサンタフェ・オペラで初演されたプロダクション、ピットには沖澤のどか指揮サイトウ・キネン・オーケストラ。歌手陣はフィガロにフィリップ・スライ、スザンナにイン・ファン、伯爵にサミュエル・デール・ジョンソン、伯爵夫人にアイリン・ペレーズ、ケルビーノにアンジェラ・ブラウワー、マルチェリーナにスザンヌ・メンツァー他、きわめて充実したキャスト。普段はまず経験できない、音楽祭ならではのデラックス仕様のオペラを味わう。
●歌手陣で特に印象に残ったのはスザンナ役のイン・ファン。歌に関しては理想的。フィガロと伯爵は歌も演技も達者で、どちらも長身痩躯。そんな意図はないかもしれないけど両役柄の隠れた共通性みたいなものも感じる。一言でいえば「男はみんなこうしたもの」的な。あとはやっぱりオーケストラのクオリティの高さ。しなやかで柔軟。いくぶん慎ましやかに始まって、次第に白熱。舞台とピットがうまく噛み合って、劇場ならではの楽しさがあったと思う。
●演出上のモチーフは「歯車」。回り舞台があって、これをくるくる回しながら場面を転換する。これに噛み合うように外側に歯車があって、一応実際に回っている。だれもがみな社会の歯車にすぎないってこと? 終幕になると歯車はもう壊れて回っていない。このオペラ、自分は終幕の騙し合いがストーリー的に壊れ気味のような気がして、もう話はどうでもよくなって音楽が自走すると感じてしまうんだけど、ひょっとしてそういう表現?(なわけない)。ただ、この目立つ歯車以外は正攻法で、喜劇にふさわしく笑いの要素もしっかりある。というか、実際に客席が随所で笑っていた。フィガロの両親が判明する場面とかで、本当にちゃんと笑いが起きる。こうでなくては。第1幕だったかな、おしまいの後奏が全部終わる前に拍手がわき起こったりだとか、客席の感度の高さが抜群にすばらしいと思った。

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