●31日はサントリーホールで堤剛80歳記念コンサート。今年80歳を迎える堤剛のもとに若手からベテランまで日本のチェリストたちが集結して祝うスペシャル・コンサート。もちろん、80歳で現役チェリストでありサントリーホール館長でもある日本のレジェンドを讃える公演ではあるのだが、それ以上にチェロという楽器の魅力と可能性を伝えるべく、ソロからアンサンブルまで多彩なレパートリーがとりそろえられていたのが大きな特徴。チェロそのものが真の主役。
●前半にダヴィドフ「賛歌」(山本祐ノ介指揮日本チェロ協会チェロ・オーケストラ)、武満徹の「オリオン」(海野幹雄&海野春絵)、細川俊夫の「線II」(山澤慧)、三善晃の「母と子のための音楽」(鳥羽咲音&鳥羽泰子)、間宮芳生のチェロと尺八のための「KIO」(堤剛&坂田誠山)他、後半はどれもチェロ・アンサンブルの曲でヴィラ=ロボス「ブラジル風バッハ」第1番、クレンゲル「賛歌」、ハイドンのチェロ協奏曲第1番(チェロ四重奏版)より第1楽章。これだけのチェロ作品を一度に聴ける機会は貴重。堤剛、山崎伸子、植木昭雄、笹沼樹、髙橋麻理子、西谷牧人、濱田遥、堀了介、山本裕康、新倉瞳、上村文乃、上森祥平、向山佳絵子、長谷川陽子といったそうそうたるチェリストたちが出演。
●三善晃の「母と子のための音楽」は国立成育医療センターの院内音楽として書かれた曲なのだとか。なので、とても優しい音楽。なんと、演奏者は本当の母と子。細川俊夫作品で2本目の弓が出てきて「おお!」と思った。間宮芳生作品は尺八とチェロというまったく異質な音色を持つ楽器の対話がおもしろい。ヴィラ=ロボスの「ブラジル風バッハ」第1番、フーガで終わるという点で、この曲集では珍しくバッハ成分を感じさせる。ハイドンのチェロ協奏曲第1番はダグラス・ムーアの編曲。4人でも不足を感じさせない。最後は花束贈呈、スピーチの後、アンコールとして堤さんがバッハの無伴奏チェロ組曲第3番よりブーレを演奏。80歳を「出発点」と語る姿はこのうえなく偉大。
September 1, 2022