●12日はサントリーホールでマルクス・シュテンツ指揮新日本フィル。新日フィルの定期演奏会はかなり久々。50年前の創立記念コンサートを再現するという趣旨で、ベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」、ラヴェルの組曲「マ・メール・ロワ」、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」というプログラムが組まれた。たしかに今だとこういう選曲にはならないかも。1972年の演奏会では小澤征爾が指揮しているが、そこまで再現するわけにもいかず、マルクス・シュテンツが指揮。コンサートマスターは西江辰郎。
●前半、「ローマの謝肉祭」からオーケストラを鼓舞して、かなり熱量のある演奏。「マ・メール・ロワ」は少し独特でカラフルというよりはスモーキーなテイスト。後半の「英雄」がシュテンツの真骨頂だろう。たくましく、力感あふれるベートーヴェン。ぐいぐいとオーケストラを引っ張って聴きごたえ大。要所でぐっとテンポを落とすなど、しばしばテンポやダイナミクスを大胆に操作するが、奇抜だとはまったく感じず、むしろ20世紀の伝統に則った説得力のある演奏だと感じる。管楽器の強奏も効果的。シュテンツは指揮棒を使わず。
●シュテンツはタングルウッドでバーンスタインと小澤に師事しているのだとか。それでこの人選なのかと納得。もっともシュテンツから連想するのは小澤よりもバーンスタインのほうで、舞台にも客席にも全方位に熱を放射していた。指揮姿も少しバーンスタインを思わせる。小柄なバーンスタインと違ってシュテンツは大男ではあるけれど。
September 13, 2022