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September 20, 2022

ファビオ・ルイージ指揮N響のリヒャルト・シュトラウス・プロ

ファビオ・ルイージ NHK交響楽団
●16日はNHKホールでふたたびファビオ・ルイージ指揮NHK交響楽団。この日はC定期なので、19時30分開演で休憩なしのプログラム。普段よりも遅く開演して同じくらいに終わるイメージなのだが、18時45分から「開演前の室内楽」がある(約15分、演奏中出入り自由)。これを聴きたい人はいつもと同じか、少し早いくらいの時間に来場すればいい。遅く来てもいいし、早く来てもいいという巧妙な設定。早く来た人は「開演前の室内楽」の後に長めの空き時間ができるが、本編に休憩がないのでバランスは取れていると思う。ただし喫茶コーナーはまだ閉じたまま。自販機を活用するしか。
●開演前の室内楽はチェロ四重奏でジョゼフ・ジョンゲンの「4本のチェロのための2つの小品」作品89。トーク入り。事前の発表から急遽メンバーがひとり変わって、辻本玲、市寛也、中実穂、渡邊方子の四重奏。このコーナーはふだんあまり聴く機会のない作品を聴けるのが楽しみ。「伝説」「踊り」と題された2曲からなり、リヒャルト・シュトラウスとドビュッシーが混在しているみたいな作風。
●本編はオール・リヒャルト・シュトラウス・プログラムで交響詩「ドン・フアン」、オーボエ協奏曲(エヴァ・スタイナー)、歌劇「ばらの騎士」組曲。中くらいの長さの曲が3曲並んでいる。曲の性格の違いもあって、前週の就任披露初日のヴェルディ「レクエイム」ほど緊張した空気にはならず、開放的な雰囲気。勢いよく「ドン・ファン」で始まって、一転してオーボエ協奏曲では室内楽的な親密な音楽。ソリストのエヴァ・スタイナーはルイージが首席指揮者を務めるデンマーク国立交響楽団の首席奏者なのだとか。「ばらの騎士」は流麗で華やか。ルイージは指揮台で踊るかのような動作でオーケストラをドライブする。この組曲、オペラのエッセンスをコンパクトにまとめていて本当に楽しめるんだけど、最後の取って付けたようなコーダが謎。
●シュトラウスは前任パーヴォのレパートリーでもあった。こうして重なっているレパートリーを聴くと、パーヴォとルイージの違いを感じずにはいられない。パーヴォは彩度とシャープネスをぐっと上げて、ビートを縦に打ち込む明快な音楽、ルイージは横の流れがしなやかで、その場で湧き上がる感興やライブ感を大切にした音楽作り。ルイージにはオペラの演奏会形式もやってほしいなと思う。
●今シーズンより、終演時のカーテンコールの撮影が可能になったので、今回も撮ってみた。インスタに最適なおみやげ。