●6日はサントリーホールでサイモン・ラトル指揮ロンドン交響楽団、ふたたび。他の日のプログラムがエルガーの交響曲第2番やブルックナーの交響曲第7番といった重量級の作品をメインに置いているのに対し、この日は大曲なしのバラエティ・プログラム。前半にベルリオーズの序曲「海賊」、武満徹の「ファンタズマ/カントスII」(トロンボーンはピーター・ムーア)、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」、後半にシベリウスの交響曲第7番、バルトークの「中国の不思議な役人」組曲。
●一曲目のベルリオーズ「海賊」から華麗なサウンド。やはりこのオーケストラのサウンドは明るい。そして武満作品を来日オーケストラの演奏で聴けるとは。トロンボーンのまろやかな音色による陰影に富んだソロ。トロンボーンのソリスト・アンコールがあったが、なんの曲かはわからず。ラヴェルの「ラ・ヴァルス」は分解能の高いサウンドで描かれるカタストロフ。後半のシベリウス7番とバルトークの「中国の不思議な役人」はともに1920年代半ばに誕生した作品。シベリウスは広大な自然の風景を思わせる作品だが、印象に残るのは音色の澄明さ。「弦に透明感がある」という言い方には、ときには響きが薄いという含意があったりすると思うのだが、LSOはもちろんそんなことはなく、密度もとても高い。終盤のヴァイオリン合奏の輝かしさと来たら。この日の白眉か。バルトークもスペクタクル。ラヴェルと同様、洗練されたおどろおどろしさを堪能。
●ラトルの日本語の挨拶とアンコールの案内があって、フォーレのパヴァーヌ。フルートのくすんだ寂しげな音色がたまらなくよい。拍手が鳴り止まず、この日もラトルのソロ・カーテンコールに。ミューザ川崎公演と同様に、ラトルは両手で天井を指さして、ホールの音響を讃えていた。
October 7, 2022