●21日は東京オペラシティでチョン・ミョンフン指揮東京フィルのヴェルディ「ファルスタッフ」(演奏会形式)。演奏会形式とはいえ、「指揮・演出:チョン・ミョンフン」と銘打たれているだけあって工夫が凝らされた舞台で、演技あり小道具ありで、しっかりと物語を楽しめる。第1幕の幕開けからして、いきなりマエストロがホウキを持って掃除をしながら登場して笑いを誘う。ガーター亭の亭主なのだ。ふだんシリアス一辺倒のように思えていたチョン・ミョンフンの意外なるコメディアンぶりを目にすることに。随所に笑いのポイントが仕掛けられている。もっともオーケストラのサウンドは重厚で、金管もパワフルに咆哮する。全般にアンサンブルの小気味よさ以上にシンフォニックなテイストを堪能。
●歌手陣はファルスタッフにセバスティアン・カターナ、フォードに須藤慎吾、フェントンに小堀勇介、アリーチェに砂川涼子、ナンネッタに三宅理恵、クイックリーに中島郁子、メグに向野由美子、他。題名役は太っちょ老騎士というよりは精悍。小堀勇介と三宅理恵の若いカップル役がいい。歌も見事だし、かなり可笑しい。大騒動の渦中でも愛をささやくことに夢中の若いカップルという役柄は、プッチーニ「ジャンニ・スキッキ」のラウレッタとリヌッチョの先輩格か。休憩は1回で、第2幕の第1部と第2部の間に入れていた。アンコールとして最後のフーガの部分をもう一度。
●「ファルスタッフ」の台本作家はボーイト。シェイクスピアの「ウィンザーの陽気な女房たち」をうまく簡潔にしているんだろうけど、変装したフォードの言動が意味不明だなといつも思う。あと第2幕の「キャベツの芯で撃たれる」もいつもひっかかるのだが、どういう表現なんだろう。全編にわたって何度も出てくる「角が生える」=「寝取られ男」は、西洋で広く見かける基本表現。
●作品中、ファルスタッフは太っていることを執拗にからかわれるわけだけど、今の時代だと少しドキッとする。男女が違えば絶対に成立しない笑いでもあるわけで、そのあたり、どうなんでしょね。
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October 24, 2022