●31日は東京文化会館の大会議室で「東京・春・音楽祭2023」概要発表会。23年3月18日から4月16日にかけて上野を舞台に開催される「東京・春・音楽祭」のラインナップが発表された。演奏会形式のオペラが3本上演されるほか、上野の街を舞台とした「桜の街の音楽会」も復活して、フルバージョンの音楽祭が帰ってくるといった盛りだくさんの内容。登壇者は写真左より、芦田尚子事務局長、鈴木幸一実行委員長、藤原誠東京国立博物館館長、長岡信裕上野観光連盟理事長。鈴木「音楽祭は続けることが大切だと、当初からムーティさんにも言っていただいた。パンデミックの間は厳しかったけれどもなんとかできる範囲で続けることができた。今回はリスタートという意気込みを持って臨みたい」
●目玉公演というべき演奏会形式のオペラでは、まずムーティが「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」の一環として、ヴェルディの「仮面舞踏会」を指揮。オーケストラは東京春祭オーケストラ。ワーグナー・シリーズはヤノフスキ指揮NHK交響楽団による「ニュルンベルクのマイスタージンガー」。プッチーニ・シリーズは「トスカ」で、フレデリック・シャスランが読響を指揮。他に大型公演では売り出し中のフィネガン・ダウニー・ディアーが都響と東京オペラシンガーズを指揮してブラームスの「ドイツ・レクイエム」。
●で、公演全体については「ぶらあぼ」で紹介記事を書くので、それ以外の公演から自分が特に気になっている公演をいくつか。ミュージアム・コンサートが今年も魅力的で、特に「東博でバッハ」は周防亮介の無伴奏ヴァイオリン、川口成彦のフォルテピアノなど強力。「福川伸陽と古楽の仲間たち」では福川のバロック・ホルンと高田あずみ、上村文乃、三宮正満らのバロック・アンサンブルでテレマン、ヴィヴァルディ、ファッシュ、バッハ他。毎回プログラムが意欲的な「名手たちによる室内楽の極」は、長原幸太らの8人でブルッフの弦楽八重奏曲。ピアニストのキット・アームストロングは「鍵盤音楽年代記」と題して、なんと5公演にわたるリサイタル・シリーズ。16世紀から21世紀までの鍵盤音楽の歴史をたどる。シリーズ「ベンジャミン・ブリテンの世界」はいよいよ最終回。辻本玲の独奏で「チェロと管弦楽のための交響曲」他。
●今回もライブ・ストリーミング配信がある。オンデマンド配信はなく、ライブ配信のみなのは「ネット席という位置づけ」だと聞いて、なるほどそれも一理あるな、と。芦田事務局長によれば、前回は平均一公演あたり100人弱の視聴者数で、来日アーティストの公演だと数が増えるそう。鈴木「日本では配信ビジネスはなかなかうまくいかない。ただ、それも時間の問題だと思う。桑田佳祐のライブは5万人を超えた。少しずつ配信は一般的になっていくのではないか」。これは同感。上の世代が配信に親しむようになる以上に、配信を当たり前に楽しむ下の世代の自然増で物事が変化するというイメージを持っている。
November 1, 2022