●11日はサントリーホールで五嶋みどりのヴァイオリン、アントワーヌ・レデルランのチェロ、ジョナサン・ビスのピアノによる「トリオの夕べ」。「五嶋みどりデビュー40周年記念~ベートーヴェンとアイザック・スターンに捧ぐ~」と銘打たれ、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第1番変ホ長調作品1-1、ピアノ三重奏曲第3番ハ短調作品1-3、ピアノ三重奏曲第7番変ロ長調「大公」というプログラム。三人の奏者が有機的に絡み合いながら調和したひとつの音楽を作り出す。とりわけ印象的なのがビスのしなやかなピアノ。完全にトリオとして溶け合う音色を駆使。全員分は見えなかったけど、3人とも楽譜はタブレット?
●前半が作品1の2曲。ともに4楽章制で交響曲的な発想で書かれた「大作」だが、特に第1番はシンフォニックでミニ交響曲的だなと感じる。第3番の冒頭は後の「テンペスト」ソナタを連想させる。終楽章が静かに終わるところもそう。前半を聴くと作品1からベートーヴェンはすでにベートーヴェンだったと思う反面、後半で「大公」を聴くとその自在さ、のびやかさ、引き出しの多さに感嘆する。趣味は変わっていないんだけど、洗練度が段違いで、すっかり垢抜けた最強のベートーヴェン。終演9時半の長大なプログラムで、アンコールはなし。
●帰り際におひとり一冊、著書のプレゼントということで、「道程」(五嶋みどり著)を受けとる。バーコードがないので市販本ではなく、40周年記念冊子ということだったが、とても力の入った立派な本だった。
November 14, 2022