●せっかくカタール開催なのに、カタール、イランと中東勢が連敗して迎えたアルゼンチン対サウジアラビア。だれもが中東勢3連敗(=アジア3連敗)を予想していたと思う。この試合、テレビ中継がなく、abema.tvでのネット中継のみ。正直なところ、ワタシも期待しておらず、前半途中から試合を観た。アルゼンチンがメッシのPKで1点を先制している。あー、これはまたアジアがボカスカとやられるパターンなのか……と思ったら、はっ。なんだなんだ、サウジアラビア、すごく高いディフェンスラインを敷いている。前日のイランとはまったく違って、引いて守るつもりなどまったくなく、かなりリスクをとった戦い方をしているではないの。もうこれは先日のイランが反面教師になったのでは。ベタ引きして6点取られるくらいなら、真正面からぶつかって3点取られるほうがまだ可能性がある。事実、サウジアラビアはラインの裏を何度も突かれるが、ルナール監督にとってはこれは取らなきゃいけないリスク。
●そんなルナール監督の戦術が実ったのが後半3分。カウンターアタックからアルシェハリが細かなボールタッチでペナルティエリアに侵入、ファーに流し込んだシュートがゴール右隅に決まって同点ゴール。もうここしかないというコース。すると、場内の雰囲気が一変、スタジアム全体が揺れるほどの太い声でサウジアラビアへの声援が鳴り響く。サウジの選手たちは見違えるほど動きがよくなり、客席の熱狂に煽られてアルゼンチンゴールを目指す。それまでの試合がウソのようにアルゼンチンは守勢に回り、相手のプレスにミスをする場面が増える。後半8分、こぼれ球を拾ったアルドサリがペナルティエリア内に切れ込み、右足を振り抜くとボールはキーパーの手を弾いてネットを揺らす。まさかの逆転。場内は異様な雰囲気になり、さらにサウジの攻勢が続いたほど。ここですぐに守りに回らなかったのがよかった。
●後半30分頃からサウジははっきりと守りの姿勢に入る。もともとサウジは堅守速攻を伝統とするチーム。こちらがリードしていて、なおかつ相手に焦りが生じる時間帯なら、守りに入る価値があるというのがルナール監督の判断なのだろう。サウジはイエローカードもたくさんくらい、選手の負傷や倒れ込みなど、あらゆる手段を使って逃げ切りを図る。本来ならここからでも逆転しかねないのがアルゼンチンだが、コンディションもよくなく、集中力と判断力も低下してしまい、そのままタイムアップ。またしてもアディショナルタイムが長く、14分くらいあっただろうか。今大会から厳密にアディショナルタイムを取っているようだが、これと中東のスタイルが組み合わさるとものすごく試合が長くなる。もはやサッカーは90分ではなく、100分、いや110分と思ったほうがいいのか。ともあれ、最後はギリギリではあったが、サウジアラビアがアルゼンチンに逆転勝利を収めて、伝説を作った。脱帽。明日、日本もドイツに対して普段の戦い方をするしかないし、それで負けたところで力不足なだけの話。もうこの大会でイランのようなベタ引きをするチームはひとつもないと思う。
アルゼンチン 1-2 サウジアラビア
娯楽度 ★★★
伝説度 ★★★★