November 29, 2022

アンドリス・ネルソンス指揮サイトウ・キネン・オーケストラ ~ セイジ・オザワ 松本フェスティバル30周年記念特別公演

セイジ・オザワ 松本フェスティバル30周年記念特別公演
●うーむ、やっぱり11月にワールドカップは無理があるのでは(←まだ言ってる)。コンサートのハイシーズンとすっかり重なっており、そもそもカタールで開催したことが「無理が通れば道理引っ込む」なのだが、その話はともかく、先週末は長野まで行ってきた。セイジ・オザワ松本フェスティバル30周年記念特別公演として、アンドリス・ネルソンス指揮サイトウ・キネン・オーケストラの公演が松本と長野で開かれており、日帰りで行ける長野のホクト文化ホールに行くことに。もともと行く予定ではなかったのだが、直前に急遽決めた。
●ホクト文化ホールは長野駅から徒歩で行けるのがいい。長野駅に来るのは3年前に長野UスタジアムでAC長野パルセイロの試合を観戦して以来。駅も美しいし、街も美しい。ホールの内部が松本のキッセイ文化ホールとよく似ていて、少々奇妙な既視感を抱くが、昭和の多目的ホールは全国どこでも似たようなものか。しかし音響は案外と良好で、不満を感じず。そして、ホクトといえばキノコの会社という認識であり、日頃からエリンギやブナシメジのパッケージでおなじみ感あり。ホクトのキノコ、おいしい。
●で、プログラムはマーラーの交響曲第9番、一曲のみ。ネルソンスは先日のボストン交響楽団来日公演からそのまま日本に残っていたのだろうか。オーケストラのメンバーは強力だ。もちろんいつもすごいメンバーなのだが、ホルンにバボラーク、トランペットにタルケヴィがいる。超強力2トップ。バボラークをオーケストラの中で聴くのはいつ以来だろうか。管楽器の名人芸と濃密な弦楽器による、かつて聴いたことのないハイクオリティのマーラー9を堪能。特に印象的だったのだが第2楽章。鋭く突き刺すようなアクセントを伴ったアグレッシブな音楽で、これが素朴なレントラー舞曲ではなくショスタコーヴィチ的なアイロニーやグロテスクさを帯びた音楽であることを実感する。第3楽章は輝かしくスリリング、第4楽章は情感豊か。演奏中は客席がやや落ち着かない雰囲気に思えたのだが、曲の終わりは完全な沈黙が長く続いて、しっかりと余韻を味わうことができた。

長野県立美術館
●せっかく長野まで来たので、以前から気になっていた長野県立美術館にも立ち寄った。善光寺に隣接する城山公園内に位置し、2021年にリニューアルオープン。「自然と一体にある美術館」のキャッチフレーズ通り、広々として開放的な雰囲気の快適空間。遠くに山が見えるのも羨望しかなく、都内では決してまねのできない心地よさ。時間の都合もあり企画展はあきらめ、コレクション展と東山魁夷館を鑑賞。見ごたえ十分。
長野県立美術館
●撮影は不可だったのだが、唯一OKだったのが「アートラボ2022 第Ⅲ期 荒木優光 ダンスしないか?」。音も含めた作品なのだが、展示室には古いレコードやオーディオ装置、家具などが配置されていて、ノスタルジーを刺激する。リアルに懐かしい光景で、モダンな美術館の一室にこれがあると異空間にワープした感が半端ではない。
荒木優光 ダンスしないか?

●この一年で長野、松本、諏訪となんども長野県内に足を運んだが、文化と自然の両面に恵まれた土地だなと感じる。なにしろAC長野パルセイロと松本山雅のそれぞれに最高のスタジアムがあるのがすごい。冬は寒そうだけど。
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